
octo
@mothmanoir
2026年7月14日
読み終わった
3000年に渡る歴史の中で「心」の概念がどのように変化してきたかを辿る一大哲学叙事詩。
「神々、あるいは自然現象と常時接続しながらその混濁したひとつのネットワーク上に生成する結節点のようなものだった」古代ギリシアの心を、世界から独立させその機能を確定させたソクラテス。そしてその心の概念は、デカルト(そしてその裏面としてのパスカル)、カントを経て彫琢されていく。そのような確固とした「心」はフッサールやハイデガー、メルロ=ポンティ、そして二十世紀後半の認知科学者たちの手によって解かれていく。「意識は脳を飛び出して「脳-身体-環境システム」のなかで成立する」という「心」観はその中で成立する。そしてそのような工程を東洋の側から逆照射する漱石の問題系。
著者の言葉を借りれば、「西洋哲学史が到達した近代的意識というものが引き起こす一種のアレルギー反応の症例パターンとその近似性」をまとめた本と言えるだろうが、「綻びと保全」の両極を絶えず往還する「心」の観念史として、「心/意識/精神の観念の変遷」という一本の線に置かれた時、取り上げられている哲学者たちそれぞれの思想が活き活きと立ち上がってくる。
若き碩学による圧巻の哲学書。何よりも読み物としての面白さが半端じゃないが、それを支えている著者の美しく巧みな文章が素晴らしい。


