
紫嶋
@09sjm
2026年7月13日
家から5分の旅館に泊まる
スズキナオ
読み終わった
借りてきた
「旅」がテーマのエッセイ集。
とはいえ、巷に溢れる旅行記とは一線を画していると思う。
著者のスズキさんの旅のあり方は、どこか日常の延長のような空気が漂っているように感じた。
思い出の地や行き慣れた場所であったり、生活圏の少し先、あるいは気になっていたご近所であったり。
たとえ初めて訪れる場所であっても、ふらりと電車から降り立って、その場で気ままに予定を決めてしまう身軽さがある。
行き先が違っても、そこでやることといえば、酒を飲み、銭湯をハシゴし、地元で長く愛されてそうな店で食事をし、その土地の街や自然の景色を眺める…というようなルーティン。
身構えない旅の仕方が、ホッとしてどこか懐かしいような旅情を生んでいる。
そのように旅のスタイルはゆるい一方で、著者は旅の最中に実にさまざまなことに、繊細なくらいに想いを馳せてもいる。
自分や家族のこと、世界のこと、過去のこと、未来のこと。かつてそこにあってもうないもの、この先いつか失われてしまうもの。変わっていくものと、変わらないもの。
それはきっと物理的な移動以上に、心や思考が時間や場所を越えてあちらこちらへ旅をしているということなのだと思う。
あるいはそういう時間を設けるための旅にも感じた。
著書内に登場するいい感じのお店の中には、この半年以内に閉業してしまったらしい場所もあり、それがまた形容し難い切なさを感じさせる。進行形で物事がどんどんと過去になっていっていて、仕方のないこととはいえ、なんだか勝手に寂しい。
