
chroju
@chroju
2026年7月8日
魔法の石板
堀江敏幸
読んでる
"ならば、そこまでしてなぜ書くのか。「書くのは読まれるためではない。ほんの少し、生きられるため」だからである。生きられるために書く。それも、十全にではなく、ほんの少し。書くことだの、孤独だのといった表現は、ほんとうは大仰に過ぎる。こうした言葉を疑いも照れもなく口にしうる輩は、おそらく信用に価しないだろう。ペロスが「書くこと」について考えるとき、考えることがそのまま「書くこと」になり、しかもそこにはいつも「ほんの少し」生活への譲歩が、退歩が、つまりは距離があって、その距離の反復によって螺旋状の思考に謙虚さが生まれ、主題なき主題の微細な変奏が可能になる。"
(Page 248)
