
mari
@mari
2026年2月15日
ほんのささやかなこと
クレア・キーガン,
鴻巣友季子
読み終わった
舞台はアイルランド南東部のニューロスという町。
当時この国は不景気で失業率が高く、プロテスタントとカトリック教会の長い確執を背景にした北アイルランド紛争、IRAによるテロが頻発。政治は腐敗し、根深い男尊女卑の伝統も、という時代背景です。
実在した「マグラデン洗濯所」という腐敗施設をモデルにした話です。慈善団体という名目は表向きで、政府と教会の癒着の温床、その内情は酷い女性虐待と養子斡旋、無償の労働力を搾取する場所。
主人公ファーロングはささやかな幸せを築いている普通の40代の男性です。ある日偶然この洗濯所に囚われている一人の悲惨な女の子を見つけてしまった、その時からの彼の心の葛藤が描かれます。このまま見なかったことにして沈黙するべきか、リスクを承知で行動を起こすか。結果的に彼の行った「ほんのささやかなこと」を通して、安堵感と小さな優しさを感じる物語です。
遠い何処かの国で起きている想像もできない出来事を通して、自らに真摯に向き合うということがどういうことなのか、ほんの小さな勇気を出すことが、人はできるのだろうか、、静かに訴えかけてくる作品でした。

