
tada
@tada7724
2026年7月16日
私の東京地図
佐多稲子
読み終わった
面白かった
ただ昔の東京の風景を描く作品、と思っていたが、全然違う。
エッセイではなく、私小説。
作者は上京してから向島を振り出しに、その時々の状況に合わせて都内を転々としていく。
東京という街への郷愁と、その時々に出会う人々の描写と、作者の人間形成の過程が一体となっている。
作者の思い出や感情から距離をとった、冷静な視点が心地よい。
モノクロの写真か版画のよう、と作者自ら言っているが、まさにその通り。
私は小説を読むときに主にストーリーを追ってしまい、昔の純文学のような描写の細やかさなどは面倒になってしまうほうなのだが、この作品は、風景や人々の描写が本当に上手く、短い言葉で端的にその時々の空気を感じさせてくれた。
注意点としては、時代は大正から戦争初期までなのだが、書いているのは終戦直後。
その時点から昔を振り返っている、というのが最初分からず、戸惑いました。


