私の東京地図
35件の記録
tada@tada77242026年7月16日読み終わった面白かった ただ昔の東京の風景を描く作品、と思っていたが、全然違う。 エッセイではなく、私小説。 作者は上京してから向島を振り出しに、その時々の状況に合わせて都内を転々としていく。 東京という街への郷愁と、その時々に出会う人々の描写と、作者の人間形成の過程が一体となっている。 作者の思い出や感情から距離をとった、冷静な視点が心地よい。 モノクロの写真か版画のよう、と作者自ら言っているが、まさにその通り。 私は小説を読むときに主にストーリーを追ってしまい、昔の純文学のような描写の細やかさなどは面倒になってしまうほうなのだが、この作品は、風景や人々の描写が本当に上手く、短い言葉で端的にその時々の空気を感じさせてくれた。 注意点としては、時代は大正から戦争初期までなのだが、書いているのは終戦直後。 その時点から昔を振り返っている、というのが最初分からず、戸惑いました。


なかやま@asheepinthewell2026年4月21日読み終わった前半は労働と生活の背景として、タイトル通り「東京地図」が見えていたのだけど、途中から左翼運動と夫婦や家族の小さな世界がクローズアップされ(ているように感じる)、そもそもなぜこの本を読み始めたのだっけ?という疑問すら浮かんでしまい...しかし自身も逮捕されたり運動の限界を吐露し、最後に輪を描くように冒頭のような東京の描写が現れて、それはお見事でした。付録のエッセイや解説に助けられました。



阿部義彦@xtc1961ymo2026年3月29日読み終わったちくま文庫3月の新刊。佐多稲子さん、初読みです。大正から昭和においての、生活と人の記録。本当に初めて知る事ばかり、そして時代と共に翻弄されながら生きた人達。料亭の女中、丸善の化粧品売り場の店員、地下活動、何よりも読み応えがあったのが関東大震災の事でした。自分も後に仙台で東日本大震災を経験したので色々と比較して、あの頃は木造建築でしたので今と違い火災の被害が多く沢山の人が焼け死んだのでした、津波の被害はほぼ無かったのだなあ。言葉使いで女性の「そうお」というのが実に痺れます、後に橋本治が女子高生にこの言葉で喋らせてました。素敵な描きぶりで記憶の中であの頃の東京を訪れたと思った。なおちくま文庫では小林信彦さんの同名異本も存在するが、こちらは後書きでは、サトウ・ハチローの『僕の東京地図』から借りて後に佐多稲子さんに同名の本がある事に気づいたそうで、ご勘弁ねがいたいと有りました。人々の生活の記録はこんなにも驚きに満ちて素晴らしい。






ジクロロ@jirowcrew2026年3月13日読んでる吾妻橋の上に立ちどまって、川上の方を眺めながら、川の上を低くまい飛んでいる鷗(かもめ)を指してこの叔父は、私にそれをおしえるのが自分もたのしそうに言ったことがある。 「鷗だがね。隅田川の上では、都鳥っていうんだよ」 (『橋にかかる夢』) 「隅田川の上では」 場所により肩書きが変わるのは、 人間だけではないと教わる、吾妻橋の上。 渡りゆく人々を他所に、 川の上から二人で眺める鷗。 これから変わりゆくであろう街と何もない空。 それを「たのしそうに」おしえる叔父、淡い描写、 東京育ち、いい文章だなと思う。






















