
ゆい
@no1sin
2026年7月18日
苦海浄土
中村桂子,
加藤登紀子,
池澤夏樹,
石牟礼道子,
赤坂真理,
鎌田慧
読み終わった
>「抗議書は緊急でございますので当方でつくらせていただき、このような文案にいたしました。まことに唐突でぶしつけではございますが、出来ますれば、御賛意いただきたくて、御電話申し上げる第でございます」とわたくしは懇願しつづける。ひとりの尊敬する著名氏からは、「あなたはそういうことをせずに、じっと辛抱して書くべきですよ作品を。
多勢の人間の、役にも立たない抗議文書より、ひとりの人間の思いをこらした文学が、どんなに効果を発するか、あなたも知らないわけはないでしょう」
との御忠告である。
そのおことばは胸に応えた。応えすぎた。
紙きれのアピールや嘆願書や抗議文のたぐいが、いかに情けなくて無力で、実効をともなわずうすっペらな思いつきであるか。だからこそこのようにして、二十年がかりで、ようよう「実地交渉」にまでこぎつけて上京し、東京我人たちとわれから人に言い、仮寝の都に惻隠の情さえ湧いてきた。けれどもなぜか、ひとは事を為すことへの効果より、ただの人情で、もろに惑乱してしまうこともある。(P.1005)
