サブレとポッポの往復書簡 "往復書簡" 2026年7月19日

往復書簡
往復書簡
湊かなえ
全部で三つのお話で構成された短(中?)編集。 この中で『十年後の卒業文集』は、ミステリーを読み慣れていないせいもあるのでしょうが、丁寧に読み進めているつもりでも、人物相関や伏線の繋がりを並行解釈しながら読み進めるのには相当な手強さを覚えました。 なので、まずはいったん最後まで読んだ上で、二回目に間を空けずにメモ書きや付箋を駆使しながら精読、というのがいいかもしれません。 ✉️十年後の卒業文集 一見睦まじく見える友達関係も、その真実は外側からは分からないのだと思わされました。誰もがそれぞれに罪悪感と贖罪の思いを抱く一方で、それを俯瞰で冷静に見つめる誰かがいる。あと『仮説が事実になる』という表現箇所には、SNSから始まる世論の独り歩きという現代の社会問題と重なるのを感じて、これをスマホ普及前に提起していたのかと捉えると、微かな寒気も覚えます。 ✉️二十年後の宿題 無事に定年まで勤めあげた一人の教師にも、実は人知れず苦悩と抱え続けた悲しい出来事があって、時間や転機がお薬になることもあるけれど、当事者それぞれの心もようはそれぞれで、真智子先生のとった行動もトロッコ問題を思い起こさせる重いテーマを内包していると感じました。そして、明るく皆で一緒にというのは、人によっては暴力でしかないということも。だから、一人面会をしなかった良隆の心がどうかこのまま凪いだままであってほしいと思います。 ✉️十五年後の補習 十五年前の悲劇の真相が、二人のエアメールのやりとりのなかで少しずつ明らかになるにつれ、無意識のうちに純一は、この海外ボランティアへの参加を通しての贖罪を決意していたのかもしれないと感じられました。だから、最後の場面でも彼に感情の揺れ動きはなく、ただただ、受け入れる。自分だけのものではない罪も全て自分のものとして… 湊かなえさんの中では比較的初期の作品ですが、早くも随所にイヤミスの走入を感じ取れます。 特に最後に収められた作品『十五年後の補習』は、読了直前に沸き上がってきた何とも言えないモヤモヤがなかなか拭いきれません。
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