山口慎太朗 "新装版 苦海浄土" 2026年7月18日

新装版 苦海浄土
地元の話なので、読んでいたらやっぱり色んなことを思い出す。 まず一番に思ったのは、水俣病を起点に公害から部落差別へと、公害から地下水の勉強へと、触手を伸ばすようにして教育の体系を編んでくれた大人たちへの感謝だった。未だにどれも忘れてないし、幼いときにあらゆるパターンの巨悪とそれへのしなやかな対応をなるべく子どもたちにショックを与えない程度に明示し続けてくれたおかげで、世界を見る目が形成された気がします。 小学生のときのかなりの長期間が水俣病を学ぶことに費やされていたが、ある日友達のみなくんが患者さんの映像を見たあとに先生から感想を求められて「かわいそうだと思った」というようなことを言ったら、先生は「かわいそうと思うのは間違えてるんだよ」みたいな指摘をした。俺は小学生ながらに先生の言いたかったこともわかるし、みなくんの素直な感想もわかりながら、心の中に濃霧のようなものが立ち込めるのを感じていた。それは単純に答えがすっぱりと見つからなくて複雑に混ざった心だったと今ならわかるが、当時の俺にはわかっておらず、またわかっていないこともわかっとらんから、なんだかただぼーっとしていた。そしてきっと作文などに「忘れないようにしたいです」などと書いて、そして本当に忘れていない。ああいう場がまずあったこと。今の俺にはとっても武器になっている。
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