むこうやま "水車小屋のネネ【毎日文庫】" 2026年7月19日

水車小屋のネネ【毎日文庫】
〈「がんばって」 最後に律の手を固く両手で握りながら、研司は言った。自分の中には確かに、この若者の良心の一部も生きているのだ、と律は誇らしく思った。〉 律のモノローグが始まる2001年に入ってやっとこの作品の全体像が見えた気がした。律が地域コミュニティのなかで受けてきた贈与、ケアしあう関係性をまた返していく、つながりの環、積み重ねのような40年。この環からこぼれ落ちる人がいないように、という著者の祈りが聞こえるような、温かい作品だった。美しかった。 津村さんは子どもの逆境体験をよく書くけど、湿っぽくないのが自分は好きなんだと思う。 ただこの作品にかぎらず、現代小説の書き手は逆境体験を描くわりに、社会福祉(制度も使い手も、ワーカーも)を描くことをしないよなぁ、とふと思った。 ※以下、ちょっと気になったところ…※ 理佐が、自身と境遇が似ている、孤独な青年と当然のように結びつく、あのあたりの雰囲気がちょっと苦手だった。「籍を入れる」という表現も、津村さんどうしたんだろうかと初めて思った。律が同性と付き合っていた、という設定も、一文サラッと出して終わりで、バランスを取るための素材として出てきた感がどうしても否めなかった。
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