むこうやま
@65yama_kana
書籍編集者、ケアワーカー。
- 2026年8月24日
ケアの倫理とエンパワメント小川公代読み終わった積読すること4年(本当に疲れてたんだな私と思った)。 ギリガンの「ケアの倫理」を文学研究の視座から考察した一冊。でも、いわゆる「人類的な営みとしてのケア」「脆弱さを抱えた人へのケア」には収まりきらない、かなり創造的な思索がなされているように思う。それを支えるキー概念として、ネガティブ・ケイパビリティ、カイロス的時間、多孔的な自己、といった言葉がでてくる。セクシュアリティや、人種といった方面にまで及んだのも、へえと思った。新たな地平!その後もいろいろ書かれているようなので読まねば。 - 2026年8月17日
ハーレムの闘う本屋ヴォーンダ・ミショー・ネルソン気になる - 2026年8月15日
よりみち部落問題角岡伸彦気になる - 2026年8月10日
- 2026年8月5日
急に具合が悪くなる宮野真生子,磯野真穂読み終わった磯野さんが、宮野さんに対して「そろそろ死という言葉を解放しませんか?」と踏み込んでいく(気を遣われてしまう人と関係を築くために「新たに持ち手」を作る)ところがすごかった。 往復書簡は筋書きが描けず、そのとき限りの出会いや問いの転がり方によってラインを描いていく。ゆえに、第三者による批判や評価の対象になりにくい、という点も面白かった。でもそれを確かに面白い(スリリングな)ものにしたのは、磯野さんも宮野さんも偶然の出会いを引き受けて、共に生きていく覚悟のある人だったから、だろう。 - 2026年7月22日
氷柱の声くどうれいん気になる - 2026年7月20日
たった一人の読者を生きる荒井裕樹読み終わった第三者からすれば些細な、取るに足らないものに見えるかもしれないけれど、そのささやかなものに本当に支えてもらうことって人生の中では幾度となくあって、それを適度な距離感と身の丈で伝えてくれる本であった。荒井さんらしい誠実な愛情表現というか、愛に溢れた本である。 〈影に守られ影に焼き付けられて、/恨んでいたものを、/手放していったときに、/覚える居場所〉〈でも、そこを歩いていけば、/必ず自分の物語に出会う〉 これで電車の中で大泣きしてしまい(恥ずかしい)、最後の2編をちょい残ししてしばらく寝かせていたのだが、 〈誰かのことを大切に思うって、その人が大切にしているものをこちらも大切にするっていうことだと思うんです〉 ここでまたまんまと泣かされてしまった。悔しい。 - 2026年7月19日
水車小屋のネネ【毎日文庫】津村記久子読み終わった〈「がんばって」 最後に律の手を固く両手で握りながら、研司は言った。自分の中には確かに、この若者の良心の一部も生きているのだ、と律は誇らしく思った。〉 律のモノローグが始まる2001年に入ってやっとこの作品の全体像が見えた気がした。律が地域コミュニティのなかで受けてきた贈与、ケアしあう関係性をまた返していく、つながりの環、積み重ねのような40年。この環からこぼれ落ちる人がいないように、という著者の祈りが聞こえるような、温かい作品だった。美しかった。 津村さんは子どもの逆境体験をよく書くけど、湿っぽくないのが自分は好きなんだと思う。 ただこの作品にかぎらず、現代小説の書き手は逆境体験を描くわりに、社会福祉(制度も使い手も、ワーカーも)を描くことをしないよなぁ、とふと思った。 ※以下、ちょっと気になったところ…※ 理佐が、自身と境遇が似ている、孤独な青年と当然のように結びつく、あのあたりの雰囲気がちょっと苦手だった。「籍を入れる」という表現も、津村さんどうしたんだろうかと初めて思った。律が同性と付き合っていた、という設定も、一文サラッと出して終わりで、バランスを取るための素材として出てきた感がどうしても否めなかった。 - 2026年7月13日
正欲朝井リョウ読み終わった序盤は「多様性」という言葉が小説のためのおもちゃにされているような気がしたのと、あと、登場人物の物言いが、読解力のない差別者にとって都合が良すぎるというか、この作品が彼らの言い分を補強してしまうんじゃないかという危惧があり、読み進めるのに非常に抵抗感があった。 しかし、夏月の〈たった一つのことを隠しているだけなのに、その一点が人生のすべてと繋がっているから、誰とも会話ができなくなる。〉という文章が、なかなかセクシュアリティの本質を突いた言語化で、すごい作家だなーと思ったあたり(当事者の言葉を読んだりしたのだろうか)から、集中して読めるようになった。 終盤の八重子の諸橋の会話がよかった。「お前らが好きな多様性って、使えばそれっぽくなる魔法の言葉じゃねえんだよ」「自分にはわからない、想像もできないようなことがこの世界にはいっぱいある。そう思い知らされる言葉のはずだろ」。「ただ、人とは違うものを抱えながら生きていくってことについては、きっともっと話し合えることがあるよ」。 解説を東畑さんに頼んだのはなかなか秀逸だと思った。「新たな「正しさ」が新たな「正しくなさ」を作り出す構造を明るみにだす」作品だったのだと思った。よい社会批評のような作品である。 - 2026年7月12日
コミック昭和史(1)関東大震災〜満州事変水木しげる読み終わったとりあえず3巻まで読んだ。水木しげるの戦争への怨み節がこれでもかと滲み出ていて、その立ち位置から描いてくれる昭和史なので、安心して読める。 これまで戦前の歴史は局所的な理解にとどまっていたので、漫画で通史として知れると、日本がいかにアジアにとんでもないことをしてきたのか、どんなふうに日本陸軍が暴走していったのかがとてもよくわかってありがたい&知らなかったことが恥ずかしい。 そして、どの時代にあっても、つねに水木少年がほんとうにボーッとしていて、まったく役に立っていないのが非常にいい。 - 2026年7月11日
空き家改修の教科書 古民家×DIYで自分らしい暮らしを実現!フクイアサト,フクイ・アサト,NPO法人結びめ気になる - 2026年7月11日
田舎の空き家活用読本農文協気になる - 2026年6月30日
つまらない住宅地のすべての家津村記久子読み終わった単行本で買って、5年も積読してしまった。 全く他人だと思われていた住民たちが、ある事件を中心に少しずつつながっていき、最後は真相に辿り着く。その気持ちよさのおかげで後半は読み進められた感じ。 津村さんらしい、すべてのささやかなこと(善悪も)を平等に扱う倫理観は健在で、非常に「らしい」作品で好きなのだけど、序盤がかなりかったるいのと、登場人物がかなり多いので、ひとに勧めるかと言われるとちょっと悩む。 - 2026年6月13日
いまファンタジーにできることアーシュラ・K・ル=グウィン,谷垣暁美読み終わったゲド戦記好きには読んでほしい一冊。 ル=グウィンが、ファンタジーの哲学に反する作品や批評家をバッタバッタと切り倒していく。気持ちいい。 ファンタジーとは何か。それは善と悪の戦いを描くのではなく、善と悪の違いを表現するもの。 世界の暗い森に歩み出すティーンエイジャーたちが、自分の道を見つけ出すのに役立つもの。非人間(生きものや木々や森たち)と人間とが、対等な存在として描かれ、支配することなく、言葉を交わすもの。 - 2026年5月31日
図書館、山へ分け入る青木海青子読み終わった自分のスピードにあわせて、ゆっくり読むのが心地よい、海青子さんの誠実な文章。 〈民主主義の砦、蒼生に帰する図書館は、一人ひとりが自らの原理、自らの言葉で考えることを支えます。そうすることで、一つの原理で覆い尽くそうとする世界に、疑問を投げかけ、そのスピードを弱めようと働きかけます〉 木々や山々、アナグマや鳥たち、犬や猫、障害のある人、海外にルーツをもつ人たち、クィアの人たち、そうした「みんな」を含んだ民主主義であってほしいという願いと、それを自分が今いる場所でつくるのだ、という静かな覚悟を感じる一冊だった。 - 2026年5月15日
まほろばの疾風 (集英社文庫)熊谷達也読み終わった古代東北、おもしろすぎる。「コメはいらないと言えたらどんなにいいか……」とぼやく阿弖流為に、心から共感する日が来るとは思わなかった。 コメをつくって人に序列をつけ、自国の利益をデカくしたい大和と、山や獣と人とが共に生き、調和に重きを置く蝦夷たち。前者が植民地化と搾取のロジックで迫り来るのに対抗するため、蝦夷もそのロジックに蝕まれていく過程がかなりリアルで、現代のいろんなものにも当てはまる気がした。 - 2026年4月29日
心はどこへ消えた?東畑開人読み終わった256頁、2日でパッッと読めた! 文春の週間連載のまとめとは知らずに買ってしまい、しまったもっと骨太なのを買えばよかった、、、と最初は後悔したのだが、読み始めるとすいすいページをめくってしまった。一遍ずつがお気楽なエッセイで、なかなか楽しませてもらった。ありがとう!という感じ。 と思わせておいて、人の心ってよくできてるんだなあ!と思うような心理学的な学びもほどよく盛り込まれていた。 - 2026年4月28日
あしたから出版社島田潤一郎読み終わった〈いまでも変わらないのだが、本をつくるときは、自分がほしいと思うものをつくりたいのである。それは、最初から、そうだった。自分がほしくないものを、ほかの人がほしくなるわけがないのだ。〉 〈ぼくは、いつか、袋小路に入り込んで、だれもほしいと思わない本をつくってしまうような気がしている。 たとえば、ある失敗を機にお金に困り、マーケティングなどといいだして、これまで培ったノウハウで、自分が必要としていない本をヒョイヒョイとつくってしまうように思う。〉 このあたり、読んでいて共感と罪悪感がすごかった。 - 2026年3月31日
- 2026年3月31日
ほんとうのことを書く練習土門蘭読み終わった〈他の誰でもない、唯一無二の私として「ほんとうのこと」を書く。そうやって「私」として世界に根付いた文章は、その根の先で誰かにつながり、新たな実を育む力になる。そう知れて、解放されるような感覚がした。書いていてよかった、と思った。それは生きていてよかった、ということでもあった。〉 読めてよかった。すらすら読めて、カウンセリングのような、心が洗われるような本だった。 他者のニーズに応えることばかりを強いられ窒息してしまうその前に、「ほんとうのこと」=自分への深い理解を試行錯誤すること、それは他者ニーズ優位なこの社会を変える第一歩でもある。ZINEなどの個人の発信が人気なのも「ほんとうのこと」で誰かとつながり、生きてる実感を取り戻したいという切実さの表れなのだと思う。
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