yomitaos "ドッペルゲンガー" 2026年7月19日

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@chsy7188
2026年7月19日
ドッペルゲンガー
ドッペルゲンガー
ナオミ・クライン
昔、Twitterのアカウントを乗っ取られかけたことがある。無名の弱小アカウントでさえこんなことがあるのだから、有名人が乗っ取りに怯えるのもよく分かる。たいして発信していたわけではないが、どこか自分のアイデンティティを失ったような気になった。 著者のナオミ・クラインはアカウントを乗っ取られたわけではない。似た名前の別人(ナオミ・ウルフ)と混同されただけだ。ただ問題は、その混同された相手が極右の陰謀論者だったことだ。発信源をちゃんと確認しないユーザーたちが、クラインは変わってしまったと嘆く。…それ、クラインじゃなくてウルフのほうですよ? 何度指摘しても、勘違いする人は増える。 戸惑うクラインが取ったのは、見ることも近づくことも避けていた陰謀論グループに飛び込むことだった。そこではいったい何が行われているのか、直に経験しようとしたのだ。この勇気に恐れ入る。 私は心の底から陰謀論者、差別主義者を軽蔑しており、関わることを全力で拒否している。クラインにもそういったところはあったようで、調査開始時点でめまいを起こしている様が色濃く描かれている。ただ次第に分かっていったのは、こうしてリベラル陣営がバカにして相手にしない間に、陰謀論者たちはリベラルの言動をしっかり学んでいるということ。戦略的に戦っているのは陰謀論者たちの方なのだ。 アメリカに限らず日本でも、リベラルだった人が極右に急転する様をたびたび見かける。ゆるやかに思想を変えていくのは理解できるが、なぜ真逆に振り切れるのか、ずっと分からなかった。クラインは調査を進める中で、個人の問題ではなく、不安定な社会でアイデンティティを確立することの難しさがあることに気づく。なるべくしてなるというか、システムがそう成り立たせてしまうような、仕組みの問題が大きく関わっている。 クラインにとってウルフは迷惑な存在だが、きっかけがあればそうなっていたかもしれないと思える存在でもある。ドッペルゲンガーは、見てはいけないものとして描かれる。自身のアイデンティティを確立する上で、似ているのに違う存在は邪魔でしかないし、けして認められないものだろう。(認めると自分のアイデンティティが揺らぐ) ウルフがなぜ極右に急転してしまったのか。それは、失敗によりそれまでのポジションを失うことになり、揺らいだアイデンティティを再構築するには、「この道しかなかった」からなのかもしれない。ウルフを取り巻く環境はまったくもって一枚岩ではない。何なら思想が真逆の人も存在する。なのに何故同じ陣営でいられるのか? 陰謀論者の陣営は、不思議と連帯感がある。各々がバラバラのことを言っているのに、なぜかつながっている。左翼やリベラルに、そういった連帯感はない。ひとつでも差異があれば連帯できない。そんなこともしているうちに極右は謎の連帯感によって膨れ上がっていく。これは当の日本でも同じじゃないだろうか?  例えば在日外国人を差別することのみで連帯し、あとの政策志向はバラバラの人たちをよく見かける。はっきり言って愚かな人たちだと思うが、そうやって見下していても社会は良くならない。連帯には連帯を、ケアにはケアで対応してかないといけない。 まさかこんな結論に辿り着くとは、読む前には思ってもみなかった。私には陰謀論者の陣営に飛び込む勇気はない。ただ、連帯を強めないとならないことだけは、痛いほどよく分かった。
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