さぶりす "わたしを離さないで" 2026年7月19日

わたしを離さないで
わたしを離さないで
カズオ・イシグロ,
土屋政雄
介護人キャシーの思い出話が淡々と語られる。そこには悲しさと同時に暖かさが常に漂っている。 ヘールシャムという世界で学び、創作し、仲間たちを愛していた。その中で成長し、多くを理解して、世界を知り、外の世界からヘールシャムを眺めた時、それは湿地に座礁した船のようで、どうやってそこに打ち上げられたのかも分からないし、元から沈む事も進む事もない閉じられた世界だった。 そんな船に無邪気に乗り込んで、自分たちは航海していると信じていた。とても悲しい話だ。 それでも、船の中での会話や友情、恋愛が嘘になるわけではない。社会によって運命を決められ、それに抗うという発想自体奪われている彼らだけど、それでも懸命に生きる姿に、確かに人間の脈や鼓動を感じた。
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