ユメ "たぶん、恋しい" 2026年7月4日

ユメ
ユメ
@yume_bookworm
2026年7月4日
たぶん、恋しい
収録されている6つの短編のシチュエーションは、どれも少し奇妙、と言えるかもしれない。合コンで出会った彼女が飼っている、架空の愛猫。長年の単身赴任から帰ってきた定年を控える夫の、整形疑惑。施設で暮らす大叔母の、ある日突然止まらなくなった口笛。本書に詰まっている光景は、私が見たことがないものばかりで、それにもかかわらず、「こういうときにはこういう感情になるのか」と登場人物の心理がすとんと腑に落ちるのだ。 一穂ミチさんは、名前のつかないような心の機微を掬い上げて描写するのが本当に巧く、読んでいると主人公たちの感情を直接胸の中に流し込まれたような感覚がして、心が震える。形容しがたいそれらの想いを敢えてひと言で表すと、「たぶん、恋しい」ということになるのかもしれない。 短いお話の中に、あっと驚く展開が何度も仕込まれている構成も見事。「すげえ泣くじゃん」と「たぶんそんな感じ」がとりわけ好きだった。
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