
おみみ
@omimi292510
1900年1月1日
ファイア・ドーム(下)
辻村深月
読み終わった
下巻にはガッツリとネタバレをしながら感想を残していきます〜。
一度噂が人も町も飲み込んでしまえば、もう元に戻ることはできない。
出口のないファイヤドームのなかで苦しむのはいつも被害者なのに、火がどこで燃え上がったのかも、誰が燃やしたのかも、わからない。そうして人は忘れていく。
ファイヤドームの壊す唯一の手段は真実のみだからこそ、亡き者の名誉のために、誘拐事件の遺族と加害者の息子であると同時に被害者でもある兄弟、信念を持ち続けた記者が一丸となって事件の真相に挑むラストスパートは凄まじかった。
だからこそ、本間先生の姿がより痛々しく思えてならない。
晋也くんがいない世界を誰よりも忘れずに、真相を求めていたからこそ、彼は噂に飲み込まれてしまった。拘置所のなかで語られる本間先生の言葉が苦しくのしかかってくる。
でも、ランドセルのなかにあった一枚の絵画を思い出してほしい。
彼が晋也くんを誰よりも気にかけ、寄り添った証拠。晋也くんに向けた彼の愛情が25年前の時を経て、真実を明らかにしたのだ。
本間先生の行動は決して許されるものではないが、彼も噂の被害者だろう。
25年前の彼はまさしく佐村先生だった。そして、一歩間違えれば彼は久我にだってなりえた。その対比があまりにも切ない。
忠治が「光」汰朗に込めた想い、本間に叫んだ言葉、紗英の最期の言葉、そのどれもに心が震えてしまう名作だったが、どうしても本間に想いを馳せずにはいられなかった。
『ファイヤ・ドーム』という作品の中で生き続けてゆく彼ら彼女らが、息のしやすい世界で生きられますように。