イツキ "アリアドネの声" 2026年7月22日

イツキ
イツキ
@maruitsuki
2026年7月22日
アリアドネの声
『アリアドネの声』は、地下に取り残された「見えない」「聞こえない」「話せない」という障がいを持った人を、ドローンを使って救助しようとする物語だ。 この本でいちばん面白かったのは、救助活動のハラハラ感だった。ようやく順調に進みそうだと思った直後に、新しいトラブルが起きるので、ずっと気が抜けない。限られた時間や機材の中で、登場人物たちが知識やアイデアを出し合い、一つずつ困難を乗り越えていく場面には、思わず力が入る。危機を切り抜けた瞬間には、登場人物と一緒にほっとして、こちらまで全身の力が抜けるようだった 。 主人公の春生が抱えている、兄との過去も印象的だった。春生は「無理だと思ったら、そこが限界」という兄の言葉を大切にしているが、その言葉は彼を励ますだけでなく、自分を追い込むものにもなっている。救助を通して、春生が「無理」を認めることは諦めではなく、別の道を探すために必要なことだと気づいていく姿が心に残った。 特に好きだったのは、「誰かと比べず、昨日の自分と比べる」という考え方だ。ほかの人にできることが、自分にも同じようにできるとは限らない。それでも昨日より少し進めたなら、それは十分に成長なのだ。 『アリアドネの声』は、緊張感のある救助小説でありながら、自分の限界との向き合い方も考えさせてくれる作品だった。無理を感じたときは自分を責めるのではなく、今の自分にできそうな別の道を探してみるようにしたいと思えた。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved