
talia
@talia0v0
2025年3月29日

オタク文化とフェミニズム
田中東子
読み終わった
借りてきた
SNSで見かけて気になって読んだ本でした。
色々書いてしまいますが読んで良かったし、こういうオタク文化について説明される本はもっとたくさん発刊されてほしいです。
何を隠そう私もオタクだしフェミニストなので、タイトルからして気になって仕方がない…!という感じでしたが私が自称する『オタク』とはちょっと違う『オタク』の話だな〜と思いながら読みました。
例えばこの本で書かれる『オタク』とは主に3次元や2.5次元アイドルを推す『推し活』をするオタクについて書かれているが、同人活動をするオタクやアニメ・漫画が好きなオタクやゲームオタクなどは(同じぐらいの人口がいると想定して書いてるけど)取り上げられていない。もちろんみんなキッパリと線引いてカテゴライズされるものではなくグラデーションの中で活動をしているオタクがほとんどだと思うものの、タイトルは『オタク文化とフェミニズム』よりは『推し活文化とフェミニズム』の方がしっくりくるな…という内容でした。
全体的にフォントも行間も大きく読みやすいテキストスタイルですが内容は思ったより難しかったです。例えば読者は自分が身近に感じている(もしくはそうではない)オタク文化と並列して語られる、様々な学者や評論家の引用を呑み込みながら本書の内容を読んで理解する必要があります。例えば本書では第一、二波フェミニズムやポストフェミニズムについては一般常識として(フェミニズムについての本を読みたがるならそれはそう、という意見も否定できませんが)説明や注釈なく引用されるし、オタク文化においてルッキズムが人種差別や性差別より不可視化され(作者はこのような書き方はしていないが)、「社会的・文化的に共有されたある種の美醜の基準を、学習しながら生活している」という説明にブルデューの「ディスタンクシオン」を形容詞的に引用している。私がここに引っかかったのは100分de名著の「ディスタンクシオン」を見たことがあって名前を覚えていたからで、この文章を読んでも「(ディスタンクシオンてどういう内容だっけ…?)」と思ってしまったからなので、他にももっと内容として目が滑っている箇所はあるかもしれない。
あとこれだけ引用が多いけれどオタク文化の説明については極めて一人称的で???となった部分もあり、例えばDA PUMPのU.S.A.がヒットした理由は(作者はU.S.A.がヒットする前からのファンらしいので烏滸がましい疑問かもしれないけれど)、YoutubeなどのSNSで踊ってみた動画が大バズりしたからと当時の音楽番組の紹介で見聞きしていて、私もそう思っていたので実際はそうではなくメディアが推し活するオタクを不可視化したのだとかの事実確認がしたくなったなと読みながら思いました。
その辺は はじめに に書かれていた「本書は実証主義的な研究に基づく書籍ではない。〜極めて一人称的な本であることは間違いないだろう。」という記述を私がちゃんと意識できていなかった反省もあります。
色々書いてしまいましたが、オタクでありながら自分が割と距離を置いていた『推し活』文化についてわかりやすく読めたという点と、また『推し活』文化について資本主義的な警鐘を鳴らしつつ男性オタク文化への懸念(/心配?)についても述べられていたこと、何より女性オタク文化に焦点を当てた本!ということで大変読み応えがありました。
著書の他の本や、同じ分野の論文などが気になりだした本でした。
また、「読み始めた」で書いた通り『推し活』について書いた以下の文章が秀逸すぎたので、少し己を改めようとも思いました笑(距離を置いてると書きつつ、全く『推し活』をしていないわけではないので)
> "さらに最大の問題は、(中略)、いまや推し活があらゆる問題を解決する万能薬のように取り上げられていることである。メディアに踊るのは、脳を活性化し、健康を維持し、人間らしく生き生きと楽しく生活でき、自己肯定感が上がり、痩せてきれいになり、友達ができて、停帯した日本経済さえ回復させてくれる「推し活の効能」である。とはいえ、もし推し活が本当にあらゆる問題を解決してくれるとするならば、その存在はかなり胡散臭いものと言えるのではないだろうか?"





