
kohhee
@kohhee
2026年7月24日
彼女のカロート
荻世いをら
読み終わった
『宦官への授業』読了。見えてるようで見えてない、言えてるようで言えてない、聞こえてるようで聞こえてない。その不安に「まあ他人だからしょうがない」と悟りをひらいたフリをせず、徹底的に付き合った小説といった感触。しかも主人公が「何も信頼していない信頼できない語り手」であるからずっとほんのり気色悪かった。文体としては専門的な用語というかジャーゴンというかをポンと使うのが特色。初めて幸福氏の家を訪れたときのスケッチが奮っている。「逆スラントノーズ」とか「モダン・シノワズリ」とか。こういうのを読むと、「ああ自分は普段おそらく“逆スラントノーズ”を目にしてるだろうに、認識できていないんだな」と気付かされる。“養子”として物語に登場した人物が“里子”と称されるようになるくだりなどをみるに、不安定なこの世界を正しく認識するために言葉を・表現を細分化しようとする性向が作者にはあるのだろう。その徒手空拳の感を悲喜劇的に描いたのが本作のような気もする。
