ゆい "庭とエスキース" 2026年7月25日

ゆい
ゆい
@no1sin
2026年7月25日
庭とエスキース
>「あんたな、そんなに深く考えることでもないんじゃ。年寄りが喉を詰まらせて死ぬことなんて、いくらでもあっていいことなんじゃ。それも寿命のひとつじゃ。年寄りじゃもの、いつか死んで当たり前だわ。じゃがな、その前にわしだってな、餅を食いたいさ。わしほどの餅好きなんてそこらにはおらんぞ。昔は餅男って呼ばれたほどじゃったんだぞ。この新聞に出てる爺さんもな、餅食わんで死ねるかと思って食ったのかもしれん。気持ちはようわかる。餅を食わん人生なんて、しょうもないさ。あんたも考えてみい。餅も食えんのじゃぞ。そんなの人生じゃないわい」。弁造さんはいつもよりも甲高い声で笑った。 「ただな、だからといって、餅を詰まらせて簡単に死ぬわけにもいかんとも思うんじゃ。無様に老いて生き続けるのもみっともないが、これはもう生命の話じゃ。何とかして生きてやろうって意地を張ることも悪うない。掃除機を咥えてでもな。同じ死ぬんでもな、最後の最後まで尽くすってことじゃ。それもまたちっぽけじゃが、もしかして餅を食うよりは意味のあることかもしれん。きっと」。弁造さんはもう笑っていなかった。(P.120)
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