
ジクロロ
@jirowcrew
2026年7月27日
重力と恩寵
シモーヌ・ヴェイユ,
冨原眞弓
かつて読んだ
2 悪を自己の外に撒きちらす傾向、わたしにはまだそれがある。いまだわたしにとって、人びとや事物が充分に聖なるものになっていない。たとえこの身が泥の塊になりはてようと、なにひとつ穢さずにいたい。思考のなかでさえも、なにひとつ穢さずにいたい。最悪の瞬間にあっても、ギリシャ彫刻の一体、ジョットのフレスコ画の一枚すら毀損するまい、アッラーのお望みなら。であるなら、なにゆえほかのものを損なうのか。たとえば、幸福な一瞬たりえたであろう、ひとりの人間の生のその一瞬を。
いかにして重力のこの影響からまぬかれうるのか。方途を探すべき。
(「二 真空と代償作用」)
この箇所に過去の自分は線を引いている。
当時は、自身の考えにない思想に関し、ただただ驚きのうちに線を引いている。
読み返してみると、胸が痛い。
涙が流れそうになる。
この気持ちの変化については、簡単には説明はつかない。
ヴェイユは文字通りの意味でこの文章を、一回性の身体をもって記している。
過去の自分は、それを俯瞰して読んでいる。
しかし今回は、そうではないらしい。
「わたしにはまだそれがある」。
そして線は消えない。
