
Autoishk
@nunc_stans
2025年3月30日

墳墓記
高村薫
読んでる
「在原業平を筆頭に歌詠みたちもみな助平だが、彼らは脳内の妄想を三十一文字にするだけで、必ずしも生身の女とかかわる必要がない。ひるがえって物語の登場人物たちは、まさに物語のために我が身を挺して女たちに言い寄り、籠絡し、恨んだり妬んだりと年甲斐もない醜態をさらさなければならない。そうして四季の庭を折々に眺めてはため息を漏らし、歌詠みたちはため息とおもに眺められるそれらの風景のなかに、濾過されて純度を増した憂愁や寂寥や孤絶の美を発見して身悶えするのだ。」(p.110)

