
Shiori
@schwarzkatzes
傷を愛せるか 宮地尚子
【読書感想文】vol.1
傷を愛せるか 宮地尚子
「この経験があったから今がある」
「あの苦労は必要だった」
そんなふうに美化することで、傷は癒やされるように思える。
でも本当は、そんな簡単なことではない。
傷は醜い。誰にも見せたくない。
傷を外に表現しなければいけなくなった時、その醜さを覆い隠せる、美化された言葉が必要なのだと思う。
では本当に、辛い経験はあってよかったのか。
そんなことはないと思う。できれば楽しく生きていたい。
苦しい思いなんてしなくたって生きていける。
でも、避けようがなくついてしまった傷たちが、誰の中にもある。
そしてそれと、一緒に生きていかなければいけない。
傷を愛せるか。
その醜さが、醜いままであることを受け入れるか。
美化しないことは、それによる傷つきを承知でいることでもある。
この本は開かれている。
あり方は差し出すが、受け取ることを強制しない優しさを持っている。
愛せても、愛せなくてもいい。
ただ私は、あなたの幸せを祈っているよ。と、静かに伝えてくれる。