しょくぱん "ハムネット" 2026年8月1日

ハムネット
ハムネット
マギー・オファーレル,
小竹由美子
今年読んだ小説の中でベスト1かも。 先を見通す不思議な力を持った主人公アグネスと、その夫となる年若い青年シェイクスピア(作中で明言はされてない)が非常に魅力的。彼らを取り巻く登場人物たちも一人一人が実在感を持って描かれていて、鮮明なイメージを伴って脳内に立ち上がって来る。16世紀イギリスの情景も細やかに描き込まれていて、映像を見てるみたいに描写が次々に浮かんでくる感じ。 暴力的な父のジョンや頑迷なところのある母のメアリ、口うるさいアグネスの継母などはあまり好感の持てないキャラクターなんだけど、ちゃんと彼らなりの理屈や感情に基づいて行動していてそれぞれに共感できる部分があるのだ。 息子を失ったアグネスの気も狂わんばかりの悲しみと喪失感は、読んでいるうちに自分もその感情にシンクロしてしまって、そばにいてくれない、仕事に逃げた夫を責めたくなってしまった。途中の擦れ違いが痛切すぎて、 「風と共に去りぬ」でボニーを失ったレットとスカーレットみたいになってしまうのかと思ったが、希望のある終わりかたで喪失からの再生の物語であると同時に夫婦の愛の物語と読めた。 映画原作とは知らなかったけど、しっかり者であるが故に割を食う夫婦の長女スザンナや超頼りになるアグネスのいかつい弟バーソロミューはどんな風に映像化されているのか気になる。機会があればぜひ観てみたい。
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