
鈍獣
@whale_in_da_room
2026年7月31日

太陽諸島
多和田葉子
再開した
“「君のパイナップル、食べていい? グダニスク、いっしょに見学しようか?」
「質問は二つ。答えは一つ。JA!」
「それじゃあ、港に着いたら船室に迎えに行くから。」
「JA!」
JとAの二つの文字がわたしの両手をそれぞれ握って歩き出した。この二文字は国によって発音のされ方は違うが、イエスの意味でわたしを勇気づけ、人といっしょに歩くことを肯定し続ける。「あ」の音を出すために口を大きく開く。子供の頃に使っていた「うん」は消極的に喉をならすだけで、外へ向かって自分を開く音ではなかった。「いっしょに遊ぼう。」「うん。」「仲間に入る?」「うん。」「僕のうちへ来る?」「うん。」「手を握ってもいい?」「うん。」遠い過去の薄闇の中で、ためらいがちの「うん」が連なって細い糸を紡いでいた。北欧に留学するために乗った飛行機が離陸した瞬間、それがぷちんと切れてしまった。”
