
ベンケイ
@benkei0127
2026年7月31日
野火
大岡昇平
読み終わった
この中編ともとれるコンパクトな長編小説が、『金閣寺』や『砂の女』などとともに長らく戦後日本文学の金字塔と呼ばれてきた理由が、読んでみてわかった。ずっと大岡自身の悲惨な戦争体験を脚色し綴った戦記にちかいものと思っていた。違った。これは確かに「小説」だった。それも世界文学級の。
終盤に至るにつれ、主人公のおかれる極限状況に目眩がした。人は殺したが、食べてはいない。きっとこの倫理観の是非だけが問われているのではない。人間そのものが問われていて、それこそ「小説」のもつ凄みだと思う。
