えい "中華満腹大航海" 2026年8月1日

えい
えい
@shibamoti
2026年8月1日
中華満腹大航海
中華料理に魅入られ、中国各地を食べ歩いて来た筆者の、お気に入りをまとめたエッセイとレシピの本。 広大な中国をあちらへこちらへと旅し、実食しているフットワークにまず圧倒される。有名なものだけでなく、かなりローカルな料理を地方の小さな村で食べることもザラのようで、熱い思いを感じる。 筆者が迷いに迷った末に決めた『三つの基準』から選抜された料理の数々は、まさに大航海の記録を綴った航海日誌。とはいえ全然三つに収まり切れていないのは筆者自身も本文で触れている通りで、ご愛嬌だ。 端々から料理への情熱を感じ、勢いと熱量の迸る文章は食欲を刺激する。食の描写はとても詳細。好きなんだなあという気持ちが伝わり、とても良い本だと感じた。 作者は飲兵衛で、健啖家のよう。食べ物の話を見ていくにつけよく食べるなあと思うのだが、気持ち良い食べっぷりというのは良いものだ。一般的な日本人の味覚に合わない食事からも色んな気づきを得、味覚の幅を拡張しているさまは、素敵だなと思う。 コラムには多少、そして終盤にはややデリケートな話題が出る。中国料理が多彩な素材を用いるゆえに、避けられないことなのだと思う。 「食べたい人は食べる。食べたくない人は食べない」……筆者はこの章でそう述べている。自分が気に食わない行動を『間違い』『野蛮』としてマイノリティに押しつけ禁止することへの憂慮に、共感した。 私も正直それは食べない、やめてほしいというメニューはあった。それは私にとって到底食べ物することが出来ない動物だからだ。ただ、私(と私の周りに)に直接害がないところにある限り、私が無理だと感じたことを相手に声高に訴えて規制しようなんて気はない。それは、驕りだろう。 人は食べねば生きてはいけない。たまたま多数派として容認された食材を食べていることに胡座をかいて他者を糾弾すれば、いずれ自分にも跳ね返ってくるように思う。 時代の流れで国は変わり、人は変わり、料理の形も変わっていく。この時この瞬間しか食べられないもの、見られないものはあるのだなと本書を読了してしみじみ感じた。 まだまだ書ききれなかった地方の話、料理の話がたくさんあるということで、続刊が出ないかなあ……という気持ちにさせられる本だった。
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