
オルソル
@heiwakinen
2025年3月30日

ユートピア
トマス・モア,
平井正穂
かつて読んだ
ヘンリー8世の時勢にカトリックの信仰を貫き処刑されたトマス・モア。彼が思い描いた理想国家(ユートピア)は、共産主義の失敗を経ている我々の目には、ある種グロテスクなディストピアにも見える。しかし、本書が1516年に刊行されたことを考慮すれば、それがいかに先見的な「理想」を描いていたかがよくわかる。人間の理性を信じ、幸福な共存を目的とした合理的共同体。その一貫したヒューマニズムは、現代から眺めると傲慢を通り過ぎ滑稽にすら見える。だが、著者の生涯について想いをはせると、そこに人類の未来に対する切実な願いを感じずにはいられない。
