ユートピア

10件の記録
- ズズキ@zukkiziburi2025年8月15日読み終わった中公文庫の澤田昭夫訳を古本屋で購入。 該当の本がなかったため代用。 トマスモアが生きた16世紀のイギリスは 貴族による囲い込み(=エンクロージャー)が頻発。海外貿易の毛織物輸出で利益を得ていたイギリスでは、羊を養育するための牧草地を得るために貴族は小作人を土地から追い出す。 小作人は仕事を失い、盗みなどの犯罪が激化。 「羊が人間を食べている」という有名な一文の背景を知った。 ユートピアでは、穀物を共同体で所有し平等に分配することで生存が保障されるため、喜びに満ち静かに生きることができるのだという。 衣服に個別なデザインはなく、1人に割り当てられる労働時間も1日6時間であり、食事を取る際は未成年者が給仕を行い沈黙を守る。 厳格な態度は、キリストの厳格な道徳律が社会構築のベースをなっているから。 理想的すぎてユートピアな世界。 1つの国を労働や結婚制度などの文化や制度からの切り口で語る形式が新鮮で、面白かった。 ただあり得ない世界ではある。 ここから得た情報を活かすとしたら、 社会主義とは?キリスト教とは?当時のヨーロッパ時代背景は? といったことを深掘りして、体系的に理解することかしら 原典を読むことは誰の解釈も入らず読めるので 心地よい。
- オルソル@heiwakinen2025年3月30日かつて読んだヘンリー8世の時勢にカトリックの信仰を貫き処刑されたトマス・モア。彼が思い描いた理想国家(ユートピア)は、共産主義の失敗を経ている我々の目には、ある種グロテスクなディストピアにも見える。しかし、本書が1516年に刊行されたことを考慮すれば、それがいかに先見的な「理想」を描いていたかがよくわかる。人間の理性を信じ、幸福な共存を目的とした合理的共同体。その一貫したヒューマニズムは、現代から眺めると傲慢を通り過ぎ滑稽にすら見える。だが、著者の生涯について想いをはせると、そこに人類の未来に対する切実な願いを感じずにはいられない。