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オルソル
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@heiwakinen
  • 2025年3月30日
    絶滅できない動物たち
    絶滅できない動物たち
    生物は環境とのカップリングで存在している。環境破壊から生物の個体や遺伝子を保護しても、生育環境が変化した時点で、彼らは新たな環境に適応するために保護以前とは異なったものへと変化する。それは進化なのか、それとも絶滅なのか。環境自体を保護するためには、これ以上の人為的介入をやめなければならない。しかしそれは、例えば珍しいカエルが生息する環境を守るため、劣悪な条件で暮らす人々を放置する、といった決定に等しい。放置された人々にとって、その決断は裕福な者たちの非人道的な道楽にしか見えないだろう。私たちは何を、どこまで守るべきなのか。
  • 2025年3月30日
    山と獣と肉と皮
    山と獣と肉と皮
    「猟師のおじさん」と出会い「野生の肉」をもらうようになった著者は、やがて猟に同行し写真を撮りはじめる。生き物を殺し、加工し、食べる。それは本来、人間が生きるためには避けることができないはずの営みだ。しかし、いつしか私たちはその仕事を他者に委託し、殺生を隠蔽してしまった。死を遠ざけた社会では生の苛酷さを軽減できる。だがそれは同時に、生の切実さをも軽減してしまう。「食べ物があふれてる世の中で、こいつを殺して食べる理由が見つからない」という著者の息子の言葉は、命のやり取りを失った私たちの姿を率直にあらわしている。
  • 2025年3月30日
    ダーウィンの呪い
    ダーウィンによる進化論の提唱は自然淘汰や適者生存のビジョンを世に広め、それは格差社会を肯定する根拠となった。しかし、実際は古代ギリシャの時代から同等の思想は存在しており、進化論はそれにお墨付きを与えたに過ぎない。つまり、優生学をはじめとする生物学的進歩の思想は、古来より人間の内にある極めて素朴な差別の原理なのだ。優劣を人間が決定した時点で、それは自然科学ではない。過去、民族を進歩させるために個人を犠牲にした優生学は、現在、親が子に能力を授けたいという個人の自由や権利として、新たな復活の兆しを見せている。
  • 2025年3月30日
    ユートピア
    ユートピア
    ヘンリー8世の時勢にカトリックの信仰を貫き処刑されたトマス・モア。彼が思い描いた理想国家(ユートピア)は、共産主義の失敗を経ている我々の目には、ある種グロテスクなディストピアにも見える。しかし、本書が1516年に刊行されたことを考慮すれば、それがいかに先見的な「理想」を描いていたかがよくわかる。人間の理性を信じ、幸福な共存を目的とした合理的共同体。その一貫したヒューマニズムは、現代から眺めると傲慢を通り過ぎ滑稽にすら見える。だが、著者の生涯について想いをはせると、そこに人類の未来に対する切実な願いを感じずにはいられない。
  • 2025年3月30日
    「美味しい」とは何か
    「美味しい」という感覚は個人の主観であり、他人から指図される筋合いのないものだ。しかし、私たちは飲食店を選ぶ際、グルメサイトで他人の評価を気にしたりもする。食の評価は、主観主義と客観主義が複雑に入り組んでいるのだ。また、私たちの味覚は料理に対する付属情報によって(その情報の真偽に関係なく)変化してしまう。では、何一つ情報を持たずに食することで真の味覚にたどり着けるのかというと、そうでもない。何の情報もなければ、それが安全な食べ物かどうかも分からない。もはや「美味しい」以前の問題である。食の楽しみとは、複雑で奥が深い。
  • 2025年3月30日
    明治維新と神代三陵
    神代三陵とは、日向神話に登場する神代三代の墓として宮内庁に認定された場所だ。それらは、神話が現実とされていた時代から連綿と受け継がれてきたもののように見える。しかし、実際は近代において極めて政治的な意図をもって創作されたものらしい。幕府の御威光が力を失い、公武合体、尊王攘夷など天皇の権威による統治へと移行をはじめた時代、その正当性を強化するために神武天皇の陵、そして神代三陵は発見(創作)された。それは、近代において国家が神話を現実と認定したことを意味し、この大きな歪みが、現人神、国家神道の基礎を築いていく。
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