鈍獣 "素晴らしいアメリカ野球 (新..." 2026年8月2日

素晴らしいアメリカ野球 (新潮文庫)
酷暑。食欲はないが蕎麦だけはめちゃくちゃ食べる “「ただ、するとどうなるんだ?」と老キッド・ヘケットはタオルで身体をふいた。「カクーラの球団がこのカクーラにいて、わしらがルーピットにいないか、さもなければ、シーズン中はずっとあそこにもどっているっていうのはどうかな? ニュージャージーに帰らないで、わしらがインデペンデンスに行き、それからリーグをまわって、またここに来る、そうやってぐるぐるまわって、百五十試合やったらどうだろう?」 「でも、どうだっていいさ、ウェイン」と言うニックネームは、生れてはじめて故郷をはなれた十四歳を持ち前の口の悪さでしっかりと押さえつけてきたビッグ・ジョンの口真似をするか、それともマンディーズ球団の裏切者を攻撃する他の選手に新人らしく味方するか、たえず悩んでいた。「おれたちがもどらなかったら、どうなのさ? とにかく、こっちにいたほうがはるかに面白いや。同じホテルに泊って、好きなときにハンバーガーを食ってさ——ロビーで女の子にウィンクしちゃって! ウェイトレスはみんな、ぴっちりした白いユニフォームを着て——いいなあ!」 「ニックネーム坊や、どっちにしても面白くないってことがやがておまえにもわかるだろうよ」とご老体が言った。「目がさめたら、自分がどこにいないかじゃなくて、どこにいるかがわかれば、混乱しないですむっていうだけのことさ」”
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