たじ
@tazi
2026年8月2日
幽霊たち
ポール・オースター
読み終わった
この小説は読者の周りに潜む現実や自然の中の美しさに目を向けさせる素晴らしいプロットを持ち、
一方では、作者の意図から外れて小説の都合から脱げ出そうとする主人公の、メタフィクション的な要素を孕む、他にない読後感をもたらす小説だ。
更には、これまでアメリカの歴史を様々に彩り、エピソードとして残った人たちのように生きたいと願い生きられない、ブラックの承認欲求を(ある種の狂気を)、発刊当時としては前衛的な、今や現代病として大衆的な親近感をも感じながら読める。
スカッとするか、モヤっとするか、よくわからず直後に再読するか、みなさんの読後をぜひお伺いしたい。
以下、自分用メモ。
ブラック(ホワイト)の物語。
物語に没入したいが、現実との一切を遮断する感覚が怖い。その感覚はやがて現実のものとなり、現に愛していた女性との別れを最後に彼が築いてきたであろう縁は全て無くなる。
それでも彼は物語を通して何者かになるために、物語を書き続ける。
それでも社会や他者との関わりがない自分が、どこに存在しているかわからなくなって怖い。だからこそ、自分の存在を誰かに見られ続けることで安心を得る。
彼の生活に色はない。ここでいう色とは、この世界中に自然に存在する色たちのこと、古来から存在する美しい胸踊る色のことで、その色を持たない彼はblack and whiteである。(どちらでもない、退屈で、中途半端な存在)
ブルーの物語。
何も起きないブラックの行動を監視し続ける、という退屈な仕事から逃避するように見つめ直した現実に美しさを感じる。
彼は退屈な仕事から逃避して、妄想に彩られた探偵稼業を始める。浮気調査から始まったグレー事件(ここでも調査対象は中途半端な中間色)は、グレーがグリーンに変身したことで、そこそこ面白くなった。
でも、ゴールドなどのような死にまつわる、ミステリアスな事件にも携わりたい。
彼もまた物語、妄想、願望に執着している。
そんな彼が、最後にはブラックを殴打するシーンは、物語にしかいきられず、でも現実に未練があるブラックへの怒りを表しながら、その一方では自分の探偵稼業に対する未練を殴り殺したと考えている。
そういう意味で、スカッとするシーンだ。