糸太 "あいたくて ききたくて 旅に..." 2026年8月3日

糸太
@itota-tboyt5
2026年8月3日
あいたくて ききたくて 旅にでる
あいたくて ききたくて 旅にでる
小野和子,
志賀理江子,
清水チナツ,
濱口竜介,
瀬尾夏美
親から子へと、何世代も越えて語り継がれてきた物語がある。これを「民話」と呼んだとき、いや、たとえば令和に生きる私たちがいわゆる「日本昔ばなし」みたいなフレームとして受け取ったとき、なにか零れ落ちてしまっているものはないだろうか。 小野さんは宮城県の山村にある一軒一軒を訪ね歩いて、そこに暮らす人々に直接民話を語ってもらってきた。本書はその記録でもあるのだが、読み終わって心に残るのは「民話」そのものよりも、語ってくれた人とそれを聞いた小野さんとの間に生じたであろう緊張感なのである。 あとがきに濱口竜介さんが書いている。小野さんにとって「聞く」とは、「古い自分を打ち捨てていくこと」とだという。情報を得ることでも、ましてや人に好かれる社交術でもなくて、「聞いたならば、それに対する自分自身のからだの反応に出会わざるを得ない。そこで自分がどのような人間か、どの程度の人間かを突きつけられる」ものと覚悟を決め、「語り手に見合う自分をつくり出さなくちゃいけない」と能動的に関わっていく。 きっと語り手も然り。自らの体を用いて語ることで、幼い頃の体験に改めて向き合う。記憶の底から絞り出した言葉は、思いがけず震えたり掠れたりして、それでも話に身を任せることで新しい自分と出会えるのかもしれない。 文字通りの真剣勝負が、幾度となく交わされてきたのだろう。このピリッとした空気感こそ、私たちがいま受け取るべき価値に違いない。
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