雨垂
@amadare__
2026年8月4日

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
伊藤計劃
読み終わった
なんと言えば良いのか……これは、この結末は、“良くない”と思う。
誰かの死を対価に得られるものが、意識できないぐらいのなんとなくの平和感で、それでテロを起こすほどの絶望を胸に秘めなくなるなんて。
それだったらテロが起こった方がよっぽど良い、と私が思うのは、私個人が社会から排除された感覚を常にどこかに抱いているからだろうか。
自分が所属する集団を保護するために、他集団内で殺し合いが起きるように仕向けてこちらに目を向ける余裕を無くす行為は戦略としては正しいかもしれないが……絶望は正しく向けられるべきだ。絶望の向け先がアメリカにしても自国にしても、それは本人が判断することであって、他人が洗脳のようにして決めることじゃない。ちゃんと話し合って殺し合うべきだ。
だから私はジョン・ポールにもクラヴィス・シェパードにも同意しない。この、びっくりするぐらいピュアでナイーヴな人たち。人をたくさん殺しすぎると、虫一匹殺したことのない人に匹敵するような精神を持つようになるというのが作者の考えなんだろうか。罪悪感が脳を支配して、結局のところ何か大切なものを失っているように見える。いや、人生において大切なものを手に入れる機会はほとんど無いのだろうし、クラヴィスは父親が自殺した時点でもう空っぽなまま生きていくことが決まっていたのかもしれない。
誰もが、生まれた瞬間に死ぬことができればいいのに。
「死者はぼくらを支配する。その経験不可能性によって」
結局、この本の内容は、この一文に集約されている。
追記
振り返ると、主人公の私生活クソつまんなすぎる……。恋愛観も死生観もガキだし。お坊ちゃん。ガキは金魚でも飼って独り言言いながらFPSでもやってな。

