
阿久津隆
@akttkc
2026年7月22日
八月の光
ウィリアム・フォークナー
読んでる
クリスマスはクリスマスで恐れているらしくビクビクしながら暮らしている。立ち上がって、暗い家の中に入って、女の部屋に行った。女は「あたしと一緒にひざまずく?」と言ってクリスマスが「いやだ」と言うと「頼みはしないわ。頼むのはあたしではないもの。さあ一緒にひざまずきなさい」とクリスマスに言い、クリスマスは「いやだ」とまた言うが、頼むのはあたしではないもの、という言葉が強く響いた。
p.367,368
それから彼は女の両腕がほぐれ、右手がショールの下から突き出されるのを見た。それは旧式の、一段式の雷管付きの短銃で、長さは小型猟銃ほどあり、目方はそれより重そうなものだった。しかし壁に映じたその短銃の影は、そして彼女の腕や手の影は、まったくたじろがなかった、それらが作る影はものすごく、ぐいと引かれて蛇の頭のように逆立った撃鉄の形も、不気味だった、それは細かく揺れもしなかった。女の両眼もまったくたじろがなかった。銃口の円くて黒い穴と同じように静かだった。それでいてそこには何の熱もなかった、何の怒りも。すべての憐れみやすべての絶望やすべての信念と同じように、その両眼は静かに澄んでいた。
『野生の棕櫚』ばかり思い出している感じがあるがフォークナーの影の演出はいつも印象に残る。映画っぽい。フォークナーが映画をなのか、映画がフォークナーをなのか、と思いながら読み進めて、クリスマスはもう屋敷にはおらず、ヒッチハイクをして、ノワール映画という感じだった。