
さぶりす
@saburisuuuuuuuu
2026年8月6日
帰還
U.K.ル=グウィン,
清水真砂子
読み終わった
ゲド戦記の4作目。長らく3作で完結したものと思われていたが長い期間を空けて4作目が発表されたらしい。そんなこともあってか、3作とは雰囲気が異なる。
世界は均衡を取り戻したが、人々が生きる現実は目を背けたくなるような理不尽が存在するし、過去の傷が癒されるわけではない。全体として上手く回っていたとしても、そこから零れ落ちるものが必ずあるのが現実だ。
前作と違って広い世界や、不気味な地下迷宮は登場せず、テナーの生活圏と、その周囲で起こる現実的なことが語られる。それは壮大なファンタジーのスケールではなく、現実世界の私達のスケールにより近い。だからこそ、地に足のついた生活もしっかりと描かれるし、身近に潜む不条理もより近い距離で、生々しく描かれる。
そんな中で、酷い虐待を受けたテナーを引き取り、その世話をし暖かく見守る。テナーの眼差しは、テルーを見ているようで、過去の自分を見ているようでもある。癒されたいは癒したいであり、救いたいは救われたいである。そんなことを考えてしまう。最後はひとまずの危機を乗り越え、平穏を感じる静かな終わり方だが、その平穏でさえも、天地創造の歌にある、境界線も曖昧な、永遠に寄せては返す波のひとつなのだろう。テナーもゲドもテルーも、私自身も、今まさに戸口から、入りては戻りを繰り返す存在なのだろう。その永遠の先に、きらりと光る泡がもしかしたら生まれるかもしれない。それがやがて新しい大地となるのかもしれない。そうであって欲しい。そんな作者の叫びと願いのように感じた。