
阿久津隆
@akttkc
2026年8月2日
八月の光
ウィリアム・フォークナー
読んでる
ルーカス・バーチが小屋に連れられてきて、入り、するとそこにはまさかのリーナがいて、捨てたはずの女がいて、子どもを産んで、そこにいて、うろたえるところだった。
p.557
彼は自分が恐がっていない、というふりをする気だわ と彼女は思った。 この人は恥ずかしい気持がないんだわ。あるとすれば、自分は恐がってないと嘘つく程度の恥ずかしさきりだわ。ちょうど前に、嘘をついたんでびくついたときに恥ずかしがったのと同じぐらいの気持しかないんだわ
p.568,569
それで見透かされたように、バーチは逃げ出して、走って、本当だったら得られるはずだった懸賞金の千ドルを捨てて、走って、「あれは俺のものになる金じゃねえ」と言うので意外な気がして、「そうさ、ルーカス・バーチにゃあその金は、そんな賞金は取る資格ねえよ。それをもらうようなことは、何もしなかったからな。いらねえよ。結構だよ」と続けてやっぱり意外だった。
彼は笑いはじめた、しゃがんだまま動かずに、消耗した顔を曲げて、笑った。『そうとも、ルーカス・バーチが望んでたのは正当な報酬だけさ。正しいものだけさ。あの人殺しの名前や隠れ場所をあん畜生どもに話したのは金めあてじゃあねえのさ、ところがあん畜生どもは捜そうともしねえ。というのもそんなことすればやつらはルーカス・バーチにあの金を渡さなきゃならなくなるからだ。正義』。それから彼は声に出して、荒い、涙のまじった声で言った、「正義、おれの欲しかったのはそれだけだったのさ。俺の権利だけ。それなのにブリキ星をくっつけたあん畜生ども、アメリカ市民を保護するって誓ったあん畜生どもは誰ひとり―」彼は荒々しく言う、怒りと情けなさと疲労にほとんど泣き声になりながら、「これだけでも人間が無政府主義者にならなかったらどうかしてらあ」。
鳥肌が立つ感じがあり、いちばん情けのないろくでもない存在だと思われたバーチが正しさを希求していたとは。