
紫嶋
@09sjm
2026年8月5日
黒祠の島
小野不由美
読み終わった
借りてきた
この小説が最初に世に出たのは2001年とのことなので、少し古い作品にはなるが、今風に言うところの「ザ・因習村ミステリー」だと思う。
かつて邪教と見なされた信仰を維持し続けている島。排他的かつ閉鎖的なコミュニティと謎めいた風習。法も富も思いのままな絶対的権力者の家系。そんな島で起きた殺人事件の謎。
連絡の途絶えた知人を追って、探偵役の主人公が島に到着した時には、事件はすでに発生した後で、権力者や島民による隠蔽工作も働いている状態であった。
余所者である主人公にとって圧倒的不利な状況から、いかにして事件の真相や信仰の謎を解き明かしていくのか。地道に新たな情報を拾い集め、因果関係をつなぎ合わせていく、その過程を楽しむためのミステリーだと感じた。
発生した殺人事件のありようこそ血なまぐさいものの、リアルタイムな連続殺人事件というわけではないため、主人公が島に到着した物語開始以降は、新たな事件が起こることはない。
ひたすら主人公があがきながら情報を集め、ああでもないこうでもないと推理するパートが続く。静かな雰囲気の中、捜索や会話、思考の流れを丁寧にじっくり楽しみたいという人にはオススメしたい。
逆に、派手な展開や奇怪な儀式のようなものを求めている人には、少々地味で冗長に感じる可能性もある。
私も基本的には、丁寧な描写や様々な謎が浮かび上がっては消えを繰り返すさまを楽しみながら読むことができた。
だが強いてマイナス点をあげるとすれば、あいつが怪しいんじゃないか・こういう可能性もあるんじゃないかと作中でたくさん提示される一方で、それらがあまり引っ張られることもなく数ページ後には呆気なく否定されてしまったり、散々主人公が苦労した割に権力者側の意向一つで急に重要な情報が出てきたりという展開もあり、「じゃあ今までの時間はなんだったんだ」と思わなくもなかった。
最後の最後に明らかになる真相についても、腑に落ちるのか、なんやねんと感じるかで分かれそうだなとは思うけれど、何より舞台設定の面白さに惹き寄せられて読んでしまう作品であった。