ゆい "寝煙草の危険" 2026年8月7日

ゆい
ゆい
@no1sin
2026年8月7日
寝煙草の危険
寝煙草の危険
マリアーナ・エンリケス,
宮﨑真紀
>今も懐かしい。背中を撫でる手、エリナの強いこだわりを笑う声、彼女をなだめようとする無駄な努力、長風呂ぶり、本当のところ食べるのがあまり好きじゃないこと、彼の腰骨、手を動かしながらしゃべる姿。また彼の写真を見られるようになりたいし、エリナより猫ばかり気にかける彼にまた焼きもちをやきたいし、日差しがあるときにはいつもサングラスをかける彼と散歩をしたいし、明け方の電話が恋しいし、寝顔を眺めたいし、よく黙りこくるけれど、あんまり長いこと黙りこくられるとこちらはいらいらしたものだったし、朝になると行かないでとすがりつき、二時間後には帰ってくるとわかっているのに行ってしまうと泣きわめき、彼女のほうはけっして、そう、けっしてそんなふうに何も知らせず、挨拶もなく、無下に彼を置いて出ていったりしやしないのに、だけどもし彼が死んでいたらどうなるかはわからない、彼が死んでいる可能性はある、だって彼の消息を誰も知らないのだから、私に教えないようにしていたのならいざ知らず、だけど隠したりするものかしら、食事も喉を通らずに血を吐くのを見、カバーが裂けるまで枕を噛むのを見、悲嘆に暮れ、酔いつぶれ、メールが来るのを何時間も待って画面を睨み続けるうちに頭ががんがんし目が赤く充血しキーボードに突っ伏して泣くのを見、電話が来るのを待って一歩も外に出ないのを見ていたのに。そして、ありとあらゆるくだらない慰めの言葉に、私がふざけるなと怒鳴るのを聞いていたのに。前に進まなきゃ得るは捨つるにありそれでも人生は続くんだまずはセックスすべきだ男は星の数ほどいるさ君は美人なんだから踊りに行こう誰か紹介するよ。(P.116)
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