𝕥𝕦𝕞𝕦𝕘𝕦 "鵼の碑 (講談社ノベルス)" 2026年8月7日

鵼の碑 (講談社ノベルス)
半分ほど読み進めてもまだ事件の全容が見えてこなかった。3つほど過去の事件が並列していてどこでどう関わってくるのかがわからない。おそらく鵼という怪異がキメラのような姿であることにより、物語全体がつぎはぎのパーツをつなぎ合わせたような構成に敢えてなっているのだろう。 中禅寺秋彦が東照宮の書庫の整理をしながら本地垂迹や国家神道について喋っているシーンが興味深くておもしろい。 「国のために人が集められる訳じゃない。人が集まる処に国が出来るんだ。人が先だ。だから寧ろ大衆の心性に合わせて宗教の方が変わるんだよ。その結果として信仰は醸成されるんだ。仏教にしても基督教にしてもそうじゃないか。そうでしょう築山君」 (京極夏彦『鵼の碑』(講談社NOVELS)245頁より) 中禅寺秋彦と京極夏彦のこういうところがわたしは好きなだし、信用している。 榎木津礼二郎、海外からきた観光客とテニスしに行ってしまった…と思ったら観光客が帰ってしまい今度は関口くんと今回のゲストキャラクターの久住さんをテニスに巻き込み、お次は木場修をテニスに誘いはじめてこ、こいつ…!てなった。 出てきてから文句たれて高笑いしてテニスしかしてない!のだが今回このひとに誰もなにも直接依頼をしてないから「こう」なのかもしれない…と読みながら思っていたが、今回は徹底して事件に関わってくることはなかった。 前巻の『邪魅の雫』がお当番回だったからかもしれない。榎木津は17年経っても相変わらず傍若無人でよかった。 総頁数829頁という、これだけぶ厚い頁数をかけて収束したオチが「陰謀?そんなものない。陰謀論に惑わされるな」なの清々しくてよかった。 バラバラに動いていた3〜4つの事件がきれいに合流して収束する、京極夏彦の風呂敷の畳み方のうまさよ。 おそらく『巷説百物語』シリーズの主人公一行の系譜と思われる人々がちらりと姿を見せてくれたことに京極夏彦のサービス精神を感じた。
鵼の碑 (講談社ノベルス)
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