
サヤ
@sayaemon
2025年3月31日

星のように離れて雨のように散った
島本理生
読み終わった
銀河鉄道の夜を通した賢治の宗教観と、小説を書くという振る舞いを通して、自らの内面や、他者との関係性に向き合う話。
2020年が舞台なので、コロナ禍ならではの描写が生々しく、あの日々がこうして文学の中に記録されていくんだな。
主人公は、上品で頭が良くて、頑な。
自分の価値を信じられないと言うけれど、実は自己評価が誰よりも高く、だからこそ世間や他者の視線や評価を求め苦しむ、どこにでもいる女性。
彼女を魅力的に感じて、見守りたいと思えるかどうかで、大分評価が変わるかな…と思った。
個人的には、主人公が他者の言葉で自らの傷に気付かされる場面が多く(というか全てこれで)、そこでようやく「そうだ、そういえば私ってこうだった」と過去の出来事や記憶を初めて提示してくる書き方が、いまいち肌に合わなかった。
トラウマで記憶に蓋をしているので仕方がないのだけど…
妙に観察眼が鋭く、物分かりの良い他者が「あなたはこうです」と結論を出してくれるまで、読み手は主人公の感情を想像できず、寄り添えない。
彼女が突然キレたり、洋服選びが極端だったことを明かされたりするたび、あっそうなの!?と突き放されてしまう気がして、ちょっと辛かった。
ミステリーの文脈なのかもしれないけど、人の内面を描く話で、主人公に感情移入できないのは読みづらいかも。


