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サヤ
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@sayaemon
静かで綺麗なものが好きです
  • 2025年10月1日
    エリック・サティの小劇場
    サティ没後100周年イヤーとあって、こんな小説まで出ていたのねと手に取った サティは、その個性的な人となりに相応しい奇抜な作品タイトルや作曲姿勢で知られているけれど、本作もそうしたタイトルを各章にちりばめたSFコメディ?小説だった 後半の展開に面食らったけれど、決して格式張らず、軽妙洒脱に聴くものを魅了し、時に惑わすサティ作品を意識しての物語なのかな 随所にサティについてのネタも仕込まれていて、(特に中〜後半)ファンには嬉しいところ 逆に事前知識無しで挑んだ時、どこまで物語に愛着が湧くかは…?
  • 2025年10月1日
    漂着物、または見捨てられたものたち
    漂着物、または見捨てられたものたち
    冬曇りの孤独な海が好きなので、タイトルと装丁に惹かれて手に取ったらば大当たり! コーンウォールを舞台に語られる短編集は、そのどれもが寂寞と、停滞と、焦燥とに満ちている ここではないどこか、豊かな何か、愛せる誰かを求め続けていながら、あと一歩が踏み出せず、荒い海風や冷たい荒野に囚われ続けている登場人物達がとてもリアルで愛おしく、美しい情景描写も相俟って、まるで私まで冷たい潮風や細かい砂の匂いを間近で嗅いだような気がした
  • 2025年9月25日
    惑星語書店
    惑星語書店
    タイトルに惹かれて手に取ったSFショートショート14篇 限られた紙幅で世界観をしっかり掴ませつつも、決して語りすぎない絶妙な文量と端正な筆致が良い 総じて、他者との繋がり方、関わり方についてのお話が多い気がした たとえ深宇宙にまで進出したとしても、誰かと触れ合いたい、誰かと語りたい、誰かを分かりたいという人間の願いは、ちっぽけな地球に押し込められていた頃からまるで変わっちゃいない ラストの『最果ての向こうに』を読みながら、そんなことを考えていた
  • 2025年9月12日
    私が語りはじめた彼は
    とある大学教授の男性によって揺さぶられる部下、家族、不倫相手達が、各々の愛の空虚さに惑い、それでも何かを守ろうと争う連作集。 平たく言ってしまうと不倫ものであり、おまけに主人公達は基本「不貞によって傷付く側」なので、じわりじわりと辛い読書だった… ラストではほとんどの人々が自らの感情になんらかの折り合いをつけ、世間一般の『愛』とは違っても、せめて『繋がりあう』ことを望んでいく その答えになぜ辿り着けたのか、すぐに納得できた話もあれば、よく分からなかった話もあった この『よく分からない』というモヤモヤ感こそが、愛というものの複雑さそのもの…なのかもしれない 誰も彼もが、うっすらと不幸。そんな印象の小説だった
  • 2025年9月8日
    ひきなみ(1)
    離島の閉鎖社会や、戦前から現代まで根強く残る性産業差別が物語の根底にある なので、つい『女性であることとは…』とばかり考えながら読み進めがちだった でもラスト付近の『理不尽な暴力や無理解には、人として生き続けることで対抗する』という、闘いとも逃亡とも違う選択には深く納得した 性別関係なく、あらゆる暴力と対峙するための、しなやかで誇り高い在り方だと感じた その様を白い航行跡『ひきなみ』に見立てるセンス、さすが…!
  • 2025年9月7日
    きみが見つける物語 十代のための新名作 恋愛編
    十代の読者をターゲットにした短編アンソロジー 初めての読書を後押ししたいというねらいからか、各作品の扉にあらすじと読みどころがまとめられていたり、本編にも大量の振り仮名がついている 作者もメディア化でお馴染みの面々を揃えているので、入り口作りに全振りした姿勢は良いと思う (「新名作」という触れ書きには正直首を捻ったけれども) また本書で初めて山田悠介の作品に触れた 紙幅1/3近くを占めるなかなかのボリュームとはいえ、そのほとんどが単純なわりに過剰な状況描写で驚いた  売りである奇抜な発想?を楽しむ前に、文章と構成への違和感でお腹いっぱいになってしまったのは、私が本書のターゲット層ではないからだろう
  • 2025年9月4日
    すみれ屋敷の罪人
    Kindleで読了 最後の解説で、作者が作家ユニット名なことを初めて知った とある風雅な一族とお屋敷、使用人たちの身に起こった悲劇について紐解いていく インタビュー形式をとっているので各人の主観が色濃く、人間らしい嘘や誤解で物語が複雑化していく様が面白い キャラクターの個性や生き様も過不足なく、温かく描かれている シンプルな筋立てで、安心してさくさく読み進められるタイプのミステリー
  • 2025年9月2日
    平行植物新装版
    平行植物新装版
  • 2025年8月28日
    賢治と「星」を見る
    大好きだったNHKの宇宙番組『コズミックフロント』のホームページ連載をまとめた一冊 宮沢賢治の人生を振り返りながら、その不器用で献身的な人間性に科学がどう関わっていたのかを紐解き、彼が生み出した作品群に現れる星々や自然現象について分かりやすく解説してくれる 星そのものについて掘り下げるというよりは、なぜその星を賢治が選んだのか、賢治が書きたかった想いはなんなのか、といった文学方面での掘り下げに重きを置いている 宮沢賢治の概要として、とても分かりやすくまとまっていると思う 天文学知識を求めてというよりは、宮沢賢治は一通り読んだけれど、もう少し詳しく知りたい!という層におすすめ 先行研究についてもきちんと引用元が明記されているので、この一冊を手始めにして、更に別の研究書へ繋げていくこともできるのが有難い
  • 2025年8月23日
    星と伝説
    星と伝説
    星座に関する神話や逸話を、子供にも分かりやすく、生き生きと描いた読み物集 底本が1961年と古いため、その後神話の解釈や研究が進み、訂正が必要な部分もあるかもしれない けれど、終始柔らかく簡単な言葉を用いて、ギリシャや中国、南洋といった異国を身近に感じさせてくれるという点で、図鑑や解説書とはまた違った『星の入り口』になってくれるだろう、素敵な本だった
  • 2025年8月22日
    ムーミン谷の彗星
    ムーミン谷の彗星
    ムーミンシリーズ再読2冊目 なかなかシビアな世界観&ハラハラする冒険が続くけれど、これが実質第2作目で、この後にあの豊かで大らかなムーミン生活が繰り広げられるのだと知って納得(スナフキンやスノーク、アニメのフローレンと初めて出会うのも今作) そもそも、自然の荒々しさを正しく恐れ、賢く立ち回ることというのもムーミン作品の魅力のひとつなのだけど、さすがに『彗星の大接近』ともなると、あまりにも天災のスケールが大きすぎ、冗談じゃなく作品全体に滅亡の気配が漂っている 海は干上がり、浜は腐り、草は焼け、森は蝗に食い尽くされる それでもムーミンは恋をし、スナフキンはハーモニカを吹き、スニフは子猫を思い、ムーミンママは息子のためにケーキを焼く そうしたありのままの過ごし方を読んでいるうちに、なんだかこちらが励まされているような気がしてくる 恐ろしい目に合っても、各々の生き方を当たり前に貫き、他人のそれも許す そんな勇気ある頑なさに心打たれた一冊
  • 2025年8月21日
    たのしいムーミン一家
    たのしいムーミン一家
    『トーベとムーミン展』へ行くために再読 シリーズ初読は中学校の図書室で、よりによって『ムーミン谷の彗星』から手に取ったため(だって彗星なんて絶対に面白そうだし…)結果、「童話にしてはハードな冒険するな!?」と少し怯えてしまい、本腰を入れて全巻読み通したのはもう少し後になってからだった 結局のところ、偶然にも作品の完成順(洪水→彗星→たのしい)に沿った読み方をしていたわけだけれども、もしこれから初めてムーミン小説を読む方がいるなら、やっぱりこの『たのしいムーミン一家』から手に取ることをオススメしたい キャラクターひとりひとりの個性が光り、島の自然は美しく、冒険も盛り沢山! ムーミンはアニメでしか知らない…という方もきっと楽しく読めるはず(ただ今作はミイ未登場なのでそこだけご注意) 好きなシーンは沢山あるけれど、個人的に心躍るのは島の嵐と、アニメでも有名なスナフキンの旅立ち、そして8月のパーティー 特にスナフキンの旅立ちは、文章だからこそ味わえる台詞の余韻や、繊細な描写が大変美しい一幕で、幾度も読み返してしまう 相手の孤独を尊重することが、どんなに愛情深い振る舞いであるかを、寂しさを抱えながらも友の幸せを願うムーミンから教わった
  • 2025年8月21日
    島暮らしの記録
    島暮らしの記録
    トーベとムーミン展にて購入 ずっと知りたかったトーベの島暮らしについて、彼女自身の言葉で読むことができて大大大満足…! 私はトーベやムーミン作品に対して、温もりや優しさよりも、孤独と静けさをより強く感じたし、見出したがっているタイプの読者なので、作中の氷解けの項でトーベとトゥーティが言葉すくなに、ひとりきりでいるかのように振る舞いながら、氷解けの瞬間を待つシーンがとても好きだった 『だれともかかわらず、部外者を決め込み、なんにしろ良心の呵責はいっさい感じない。なぜかはわからないが、なにもかもが単純になり、ただしあわせだと感じるに任せる。』 (P59)
    島暮らしの記録
  • 2025年8月17日
    アンソロジー 料理をつくる人
    アンソロジー 料理をつくる人
    『食』がテーマの小説やエッセイもいいけど、なんならレシピの文章を読み上げるほうが好きだし、夢中になれるという妙な癖がある それはつまり私の中では、食べることではなく、作ることに、より重きを置いているんだな…と、このアンソロジーを読んで再確認した どの作品も面白かったけれど、『作り、供すること』が命に肉薄する千早茜、織守きょうや氏の2作が特に心に残った
  • 2025年8月16日
    かぜのてのひら
    歌集を読むようになってからしばらく経つのに、俵万智の作品を手に取ったのは初めて これまで教科書や副読本でしか触れたことがなかったので、こんなにもご本人の生活や恋愛観に肉薄した歌を作られるとは知らなかった… 二十代の女性に訪れる様々な転機に対する揺らぎ、生活に対する鮮やかな視点、恋人や家族に注がれる愛情深い眼差しを端々に感じる歌集だった
  • 2025年8月15日
    芝生の復讐
    芝生の復讐
    『西瓜糖の日々』に続いてブローティガンを読む 長さも題材も様々な短編集が沢山詰まった一冊 ブローティガンの自伝的要素が強く、アメリカという国について何度も思いを馳せた 話の筋を追うというよりは、時折ピカっと光る冴えた一文、美しい描写に目を見張る、そんな読書体験ができる一冊
  • 2025年8月15日
    三つ星の頃
    三つ星の頃
    この夏は、大佛次郎記念館に野尻抱影の展示を観に行けたことがとても良い思い出になった 『三つ星の頃』は、星の文人として知られる抱影先生の自伝要素も濃い短編小説集。記念館の展示で先生の来歴や人となりに触れたからこそ、これらの作品をしみじみと味わえたのが良かった どの作品も、自然描写が大変美しい 素朴な登場人物達にも、先生のお人柄を感じた
  • 2025年8月15日
    秘密の花園
    秘密の花園
    言わずもがなの児童文学の大名作、子供の頃に読んだきりで細かい筋を忘れかけていたので再読 大人になってから読むと、メリーやコリンの個性だけでなく、彼らを取り巻く大人達のリアルさにより目がいく 傷付き逃避する大人、愛情細やかな大人、自分勝手な大人、事勿れ主義な大人…どこかしらが自分自身とも重なるが故に、胸をチクっと刺されたり、仕方がないよね、と諦めに似た共感を覚えたりするのが新鮮だった
  • 2025年8月15日
    野川
    野川
    長野作品の中でも特別リアルと地続き且つ、メッセージ性が明確な一冊 特に初期作品に顕著な幻想的で耽美な世界観や、こだわりの美意識を映したキャラクターを求めて本書を手に取ると、肌触りの違いに少し驚くかもしれない それでも、少年達の各々の羽ばたきを見守る視線は穏やかで優しく、教師の語りという形で届けられる若者へのメッセージは含蓄が富んでいる (そもそも長野作品に、こうもシンプルで明確な『含蓄』を読み取ること自体衝撃的だったのだけど、読了後に本作が読書感想文コンクールの課題図書だったことを知り、思わず膝を打った)
  • 2025年8月4日
    野尻抱影
    野尻抱影
    月も星も好きだし、よく仰ぎ見るけれど、しっかり学んだり調べたりはしてこなかった自分の背を、ぽんと押してくれた野尻抱影の随筆集 美しくロマンチックな語りで、星々の悠久の魅力、生活に根付いた親しさ、世界中で異なる星の名前の奥深さを教えてくれる 本著を含むSTANDARD BOOKSは、科学と文学を繋ぐ随筆シリーズ この本と出会ったおかげで、星空に覚える「きれい」というシンプルな感動に、知識という陰影が加わりました
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