沙南 "今夜、すべてのバーで 〈新装..." 2026年8月9日

沙南
沙南
@tera_37
2026年8月9日
今夜、すべてのバーで 〈新装版〉
「普段からこんな色なんですか、あんたの目」  おしゃれなバーの話かと思って手にとったら、アル中のリアルが綴られていた。  主人公の他人を観察する目が気に入った。入院中に出会う個性あふれる面々に、読んでいるこちらもふふっとなる。みんな天に召されそうなのに💦🕺  飲酒の描写がいい。『食道に細い蛇がおりて、胃の腑にぽっと灯が点る』だって。めちゃいい。作中で明言されてはいないけれど、依存症になる前から、彼は好きで飲んでいるわけではないように見えた。それなのに、言葉の端々には酒への愛が滲んでいる。なぜだろう。  そんなことを考えていたら、酒は元カノみたいに「愛しくて憎い」と語る場面があって、妙に納得した。相反する感情が同時に存在するからこそ、人って面白い生き物なのだ。好きだけど嫌い。やめたいけど、やめるのが怖い。幸せになってほしいけど、目の前から今すぐ消えてほしい。  それでいいのだと思う。どちらかわからないときは、保留にしちゃって全然いい。一生考え続けたっていい。すぐに出る答えの方が正しいとは限らないから。  私は割と楽観的だからそう考えられる。結構、「まあいっか」で済ませられる。けれど、彼はそうではないから酒に溺れ、少しでも苦しみを和らげようとしているのかもしれない。どんなに足掻いても納得できる答えに辿り着けないことって多すぎるし、根が真面目な人ほどそれに耐えられないのだと思う。  うちの家系の男たちは、この主人公のように酒に蝕まれて死んでいった。(彼はまだ死んでいないけれど、長生きはしないだろうなと勝手に思った。)  一時期、一緒に暮らしていた叔父が、まさに彼と瓜二つだった。叔父の物語かと錯覚するくらいに。ひとりで黙々と飲んでいるような人だった。  幼心に、「私は絶対あんな風にはならない」って思っていたけれど、大人になればなるほど、叔父の気持ちも、この主人公のことも、わからんでもない。  身体への負担とか、誰かが悲しむとか。一旦どうでもよくて、人には脳みそを、とにかくバーンってしたいときがあるものだよね。(脳みそ破裂の幻覚の話が一番笑った) 【名言メモ📝主観】 ・内臓は頑丈でも、おれの心には穴がいくつもあいていた。 ・答えるということは、自分の人格を見せることだ。装って作った人格を見せるのは面倒臭いことだし、装っていない裸体をさらすことはそれ以上にいやなことだった。 ・さやかは涙でできている。だから決して泣かない女だ。 ・「しなびたマリー・アントワネット」 ・でも、死なないうちはみんなおんなじ病人なんだからさ。むずかしい顔して気の毒がったってしょうがないんだよ。けたけた笑ってないと、なおるもんもなおらないからね。 ・きれいさっぱりとした「具体」であって何がいけないのか。どうして人はアル中であってはいけないのか。えらそうな「人間」でなくてはならないのか。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved