
torajiro
@torajiro
2026年8月7日
「ふつうの暮らし」を美学する
青田麻未
読み終わった
audible
日常美学の入門書。わかりやすくかつ面白かった。
まず美学という学問分野が「美」についての学問というよりも「感性についての学問」である、という点が重要ですね。美学という言葉自体に「自分の美学を貫く」といった信念的な意味もあるのでなおさら「美」という極めてポジティブなものについての学問のような印象を受けてしまう。もはや感性学と訳を変えた方が良いのでは。
そしてその美学の対象は芸術美学、自然美学、日常美学の3つに分けることができる。本書はこの中でも比較的新しい日常美学を解説する。
家具などの機能に対する感覚、掃除・片付けや料理といった家事との関わり、家の周辺環境である地元、日常の中にあるルーティーンなど日常美学の視点に色々な角度から触れさせてくれて色々な気づきがあった。
まずは感性の学問ということで、ポジティブな感性だけでなくネガティブな感性についても洞察の対象であるという否定美学の視点はなるほどなと思ったし、「新規さ」と「親しみ」といったものも日常美学で扱われるというのも面白かった。
新規さと親しみは他の分野にも応用可能というか示唆に富むものだと思う。例えば対人支援においては受益者が経験しにくい新規さへのアクセスを支援する場合(例えば体験格差に対するアクティビティ機会の提供プログラムなど)もあるし、一方でそうした体験が「新規」であるということ自体に格差を見るという視点もあり得る(学習支援や居場所等のボランティアスタッフが話を聞いてくれてる存在として関係が持てるというのは当初は新規の経験だが、厳しい環境でなければ当たり前に得られていたであろうそのような関係に「親しんで(慣れて)」いくことが重要、など)ので、社会的プログラムの意義や価値判断とも日常美学というのは大いに関わり得る、学びかいのある分野だなと強く感じた。

