
紫香楽
@sgrk
2026年8月10日
ナイン・ストーリーズ
J・D・サリンジャー
読み終わった
面白かった〜
いやごめん読んでる最中はつまんなかった。読み終わるまでどんな話なのかよくわかんないし、読み終わった瞬間も「これで終わり?」になる。
読み終わってこういう話かな〜というのを考えると面白くなってくる。
あった短編からいくつか選んで書いた順に並べて収録しただけらしいんだけど、入っている順で対比構造ができているのはなんでなんだろう。天才だから?
ライ麦畑とは全然違う感じだったのも意外だった。
かなり情報が圧縮されているし、バナナフィッシュに始まり結局登場人物がなにを考えて感じているのかは分からない話が多い。
でもバナナフィッシュは主人公が大衆や世俗と断絶を感じているという構造自体はライ麦畑に近い。
サリンジャーがこんなに戦後PTSDについての作家だったとは全然知らなかった。
「エズミに捧ぐ」が特によかったし美しかった。最後の一文がとりわけいい。
「小舟のほとりで」もブーブーが提督として振る舞ったり、最後息子と駆けっこして帰ったり、ユダヤ人差別に苦しめられる中でも明るく過ごそうとノリが良くてよかった。
「笑い男」も「エズミに捧ぐ」の対称となる話としていいな。攻殻機動隊の笑い男事件とどう関係あるんだろうと思いながら読んだんだけど、名前を引用してるだけだったね。
読み終わって「こういう話か〜」と思っても人の感想を見ると全然捉え方が違ったりしておもしろい。
バナナフィッシュでも奥さんの人間性の受け取り方は多様だなと思う。表層しか見てないのはそうなんだけど、シーモアを庇って味方になろうとはしている、でも内面を理解しようともしてない、まあ人間そういう感じだよねと思う。ミュリアンも別に悪気はないんだと思う。戦後PTSDなんて知識のない時代なわけだし。
バナナフィッシュがああいう結末だからこそ、エズミに捧ぐで主人公の心が幾許か救われて、希望を見出せる終わりがよかったなと思う。
とは言え一度負った傷が完全になくなることなどないわけで、そうしたことからあるがままを受け入れる東洋思想は救いになったのかなと思う。
面白かったしグラース家のことは気になったので他の作品も読みたい気持ちはある。
でも正直得意な作家とは言い難い。キャラの言動のみが描かれ、そこから人柄や感情や意図を推測するようなクイズは現実世界で常にさせられていることなので小説でまでしたくない。
まあ気が向いたら…