トラ "店長がバカすぎて" 2026年8月12日

トラ
トラ
@Toreads1234
2026年8月12日
店長がバカすぎて
中型書店で契約社員として働く谷原京子とその店の店長山本。2人が中心になって巻き起こるドタバタコメディ。職場の武蔵野書店、その近くの喫茶店・イザベル、実家の小料理屋・美晴という三つの場所で物語が展開する。 書店員の物語ということと、そのリアルさが話題になったのだろうが、コメディの中にミステリーみもあり、とても面白く読み進められた。魅力的なキャラクターと引きのある関係性が、物語の推進力になっている。 きっちり大小の事件が起きるし、人物の過去と現在が繋がっていく。細かい本屋事情、契約社員の苦しみ、出版社との関係などディティールが素晴らしいんだと思う。できればもっともっと書店員の実情みたいなところを読みたかった。 以下愚痴含むネタバレ 執筆から考えると10年弱なのか、それでも驚くほど時代が変化してしまったことを感じる。特にカスハラ客が出てくるが、こんなもん秒で出禁にすればいいと思ったし、常連の客に「前もその作家の本買ってましたね」と話しかけるのは職業倫理的にどうなのかとか、発売前のゲラの内容をレストランで話してしまうのはとか。常識が変わってしまったことと、その厳しい世間の空気を内面化してしまっている自分に気付き、楽しみきれなかった部分がある。当時読んでたら違ってたろうな。表現の端々やそもそもの構造から懐かしさを感じた。 それと、現在の「クイア役は実際のクイア俳優に」という論調に似ているが、男性作家が女性主人公を書くことの危うさについて考えさせられた。もちろん「殺人をしていない作家の推理小説」が成立するように、作家の属性とキャラクター造形に矛盾があって当然だし、想像力というものがそこを繋ぐと思う。だから男性作家が女性主人公を描くのは全く問題ではない。ただ、アホな女性主人公を書くと少しモヤる。正直、主人公の京子は戯画化された「情緒不安定な面白29歳女性契約社員」という感じで、あまりその内面描写や社会的状況に乗れなかった。気分が乱高下し、それと仕事が連動してしまうところとか、急にキレるところとか、店長に恋しそうになるところとか。なんというか、あまりに便利に投影しすぎではないかと。男性主人公ではダメだったのかな。 そもそも、自分はダメ店長に全く可愛さを見出せなかったので、この構図にずっとズレを感じていた。やっぱり恋愛の持ち出され方が安易だと感じてしまうとそこで冷めてしまうな。フィクションの中のリアリティのラインが自分とは違う。それでもある程度は面白く読めた。
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