
イシイルカ
@ishiiruka0421
1900年1月1日

水車小屋のネネ
津村記久子
読み終わった
健気にもまだ幼い妹を連れてふたりで暮らして行こうと決める、高校を卒業したばかりの姉。
勤め先の蕎麦屋は人の言葉を上手に話すヨウムが石臼の番をするという風変わりな場所。そのヨウムのネネの相手をするのが彼女の仕事のひとつでもある。
育った環境もあるのか実際の年齢の割には大人びた言動をする妹のりっちゃんこと律と、無責任で呆れた母親に翻弄されるしっかり者のお姉さん、理佐のコンビは危なっかしいように見えてきちんと周囲との絶妙なバランスを保って生き抜いて言ってるように見える。
コツコツと爪に火を点すようにお金を貯めて小さな冷蔵庫を買い、学校でいじめられようがふたりで懸命に生きていく姉妹の姿は胸を打つ。
第二話になり、急に律が大人の女性になっていてニルヴァーナなんか聴くようになっていて驚く。
波のように姉妹ふたりが翻弄された第一話とうってかわって、静かに穏やかに物語は進む。
そして台風の夜。
聡という青年と姉妹の微妙な距離感。間にネネが。
常にさらっとした描写だけれどもそこに出てくる音楽はかなり渋くていい曲ばかり。
そして第三話。更に八年が経過する。
蕎麦屋の閉店、そして夫婦になった理佐と聡。
ネネと律。
そして新たなる水車小屋のメンバーとなる研司くんが、かなりの事件性とともに登場。
律が自らの中学生時代を思い起こし、姉の苦労や勇気を考えて、彼の勉強をみてあげる様子は、ずっと姉妹の生活を読んでいた身としては微笑ましいし、とても律らしいなあ、とも思う。
藤沢先生の言う
「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈なものですよ」という言葉が沁みる。
最後の第四話。
2011年。震災の年。
寛美さんのように、あの日、気持ちが暗くなるニュースを職業として延々と伝えなければならなかった人々のことを思う。
震災、そしてコロナ禍と、登場人物たちを巡る年月は流れていき、いなくなってしまった人は思い出の中に、優しい記憶として残っていく。
いい物語だったなあ。
2025/12/13







