和月 "青天" 2026年8月13日

和月
和月
@wanotsuki
2026年8月13日
青天
青天
若林正恭
表舞台で本職を持つ人の書く作品に対する雑念が取り払われた感覚。 今まで何となく、文筆家の本とそれ以外で区別してしまっていたけど、そんなの関係なくシンプルに面白い小説だった!! アメフトの基礎知識が無く、2000年前後の時代背景も疎い。設定だけならば解像度が低い故になかなか読むハードルが上がるけれど、文章の魅せ方が巧みで全く苦にならなかった。 1Qは冒頭の展開から面白く、引き込まれる。2Qは打って変わってかなり雁字搦めな感覚に襲われるが、学校や教室の窮屈で鬱々とする世界が細かく描かれていて、苦しいのに読み続けてしまう。3Qからのオーバータイムは、より加速度を上げる物語に目が離せなくなり、一気に読み耽ってしまった。 スポーツを題材としていることもあり、中盤以外はスピードと暴力性と純粋な闘争心に満ちた作品。 冒頭で登場する強豪校の選手と対峙する場面。 主人公が心の中で「殺す。死にたい。」の両方を抱く所がとても印象的だった。 真逆のようでいて、この2つの思いに支配される感覚はすごく分かる。 合間で時折、倫理の話が出る場面も好き。私が学生の頃は倫理の授業が無かったので、アリと岩崎先生の対話は読んでいてとても面白かった。 形ばかりの和解、みたいなシーンが無いのも良い。全力でぶつかった結果、途絶える縁もあれば最後には笑顔をかわす仲になることもある。摩擦がないと生まれない関係性が丁寧に描かれていて、好感が持てた。 次に再読する時はもう少しアメフトのルールを踏まえて読んでみたい。きっともっと面白くなるだろうな。
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