サリュウ "蜜のあわれ・われはうたえども..." 2025年4月1日

蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (講談社文芸文庫 むA 2)
「われはうたえどもやぶれかぶれ」、詩作に蹴躓くようになった老作家が、とにかく尿が出ないことに苦しみ、自分の金玉がとつぜん愛おしくなって手のひらであっためてみたり、入院先の放射線治療中に女のことを考えようとするもなかなか想像のなかに女が現れてくれず、我が欲望も潰えたかと思いを馳せたり、放射線治療室へ行くためのエレベーターをいつも先取りして一緒に乗せてくれない別の患者に殺意にも似た怒りを抱いたりと、老身の悲喜こもごもすったもんだが延々続く。志村けんのアル中コントをなんとなく思い出す勢いがあって、ずっと不憫なのに笑ってしまう。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved