
プールに降る雨
@amewayamanai
2026年8月14日
崩れゆく絆
アチェベ,
粟飯原文子
読み終わった
アフリカ小説というとチュツオーラやマバンクのようなめくるめくマジックリアリズム的世界を描いたものというイメージがあったのだけど、これはちょっと違った。
第一部では19世紀後半の植民地支配以前のアフリカ社会の習俗や慣習などの文化をひたすら、くどいともいえるくらいに描写する。外の人間から見るとその独特の機序によって進行する儀式や取り引きはとても「アフリカっぽく」期待通りともいえる。
第二部ではキリスト教をはじめとしたヨーロッパ文明の侵入によって共同体がじわじわ崩れる様子と、それにともなって従来の社会に内在した脆弱性や矛盾があきらかになる。
そして第三部で両者の直接的な衝突とカタストロフが生じて幕を閉じるといった構成になっていて、これらはすべてアフリカ側の視点で描かれる。
第一部の歴史の語り直しということでいえば、いま読んでいるポール・オースターの『4321』を想起するし、声を奪われた側がみずからの声を取り戻すという意味では、同じくいま読んでいるエドワード・サイードの『オリエンタリズム』が批判する植民地主義とそれを超克する試みといえるのではないかと思った。また、それと同時にステレオタイプ化されたアフリカを見たがっていたのかもしれない、という自分の欲望に気づき、あ、あぶねーとなった。
訳者による30ページを超える解説では物語の構造が鮮やかな手技で腑分けされ、一般的な文庫の解説の域にとどまらない読み応えのある評論となっていて大変参考になった。




