amy "咲良は上手に説明したい!" 2026年8月14日

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@note_1581
2026年8月14日
咲良は上手に説明したい!
生理用ナプキンを着用してみた男性作家こと滝沢さんの新刊。 これまで滝沢さんの著作は何冊か読んでおり、歴史小説と生理時に着用するナプキンを作ることを組み合わせた『月花美人』など今まで歴史のなかで描かれてこなかった、女性の生活やその時代の困難さを照射した小説を書かれている方だと認識している。 その滝沢さんの「今一番、熱いお仕事小説誕生!」という触れ込みで話題の本書だったが、お仕事小説があまり好きじゃない私でもものすごくおもしろかった。 しかも女性バディものだし、その女性たちの仕事のライバルも女性なのである……。うれしい。 お仕事小説といえば代表的なのは池井戸潤だと思うが、あのあたりの作品になかったものがあった。 お仕事小説が苦手なのは、基本的に仕事が好きな人間しか出てこないからで、その脇に追いやられる生活部分が薄いからなのだけれど、この小説はテクニカルライターという職業を起点にしつつ、ベビーカー、AED、トイドローンなど生活のなかに組み込まれたいろんな属性の人たちが出てくる。 テクニカルライターとは「電化製品・精密機器などの取扱説明書を作成する職業」のことである。 物の使い方をどう伝えるかということは使う側の動線を体感に即したかたちで想像する必要があるし、それがベビーカーなら子どもを連れているとき、AEDなら倒れた人が目の前にいるとき、トイドローンなら子どもが使うとき。 それぞれ使う人の属性や使うときの精神の状態など、あらゆることを想定して、どんな状況でもわかるようにしなければならない。 お仕事小説は基本的にその職場の人たちしか出てこないけれど、この小説はお仕事小説でありながらお仕事以外の側面、仕事ではない、とされるようなところ模とらえている。 AEDを使うとき、倒れた人が女性であったとき、男性がAEDを使うとなったら躊躇してしまうのはなぜなのか、一分一秒を争う状況で、その躊躇を取り払うためには説明書に何を書いておけばいいのか。 テクニカルライターの仕事をしていくにあたり、社会のあちこちに横たわる問題があぶりだされて、それに主人公が気づいていく。 テクニカルライター未経験の主人公が世の中の見え方が仕事によって変わっていく様が鮮やかで、人物の変化を感じることができるのは小説の醍醐味だと思う。 最後のトイドローンのコンペの場面では主人公たちやトイドローンに込められた製作者の思いに泣けてしまった。空は楽しいものであるべきで、恐ろしいものであってはいけない。 何を隠そう滝沢さん自身がテクニカルライターとしてお仕事をされているので、文章が明快で読みやすく、情景の想像もしやすくてするする読めるものだった。 内容はけっこう硬派なのに、文章が軽くてすごい。次作も早く読みたい。
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